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リストフェスティバル2011 in 表参道
イブニングコンサート 第3回 開催レポート
2011年10月26日(水)19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
主催:東京藝術大学音楽学部 協賛:カワイ音楽振興会
出演:東誠三 砂原悟 新納洋介 冨士素子

 “リストフェスティバル2011 in 表参道”5日目、イブニングコンサート第3回を聴いてきました。今日は冨士素子さん、新納洋介さん、東誠三さん、砂原悟さんの4人のピアニストによって、《詩的で宗教的な調べ》の全10曲が演奏されました。

 《詩的で宗教的な調べ》は、1845年から1852年にかけて主にヴァイマルで作曲され、これはリストがローマで聖職者の地位を得る前の時期ですが、リストの晩年を形成する宗教的な側面が非常に感じられる作品です。この標題はフランスの詩人ラマルティーニ(1790-1869)の詩集からのもので、リストはすでに20歳前後でこの詩集に出会い、感銘を受けていたと言われています。

 第1曲目から第3曲目(〈祈り〉〈アヴェ・マリア〉〈孤独の中の祝福〉)を演奏して下さった冨士さん。〈祈り〉での冨士さんの深みのある音は、まるで祈りを唱える心の声のようでした。また〈孤独の中の祝福〉は、穏やかさの中にも高まりと静けさのコントラストのある演奏でした。

 和音が絶えず繰り返され、グレゴリオ聖歌の朗誦が暗示されている、第4曲目〈死者の追憶〉。演奏されたのは、新納さんです。その静けさには息をのむような美しさを感じ、1音1音が心にしみ入るような感覚になりました。

 休憩をはさみ、東さんが第5曲目から第7曲目(〈パーテル・ノステル〉〈眠りから醒めた御子への賛歌〉〈葬送曲(1849年10月)〉)までを演奏して下さいました。この日筆者の印象に一番残った〈葬送曲〉。処刑された祖国ハンガリーの友人に対する追悼の念が込められた曲です。東さんの息づかいが間近に感じられ、祖国や友人に対するリストの熱い思いが伝わってきました。

 最後に砂原さんが登場。演奏して下さったのは、第8曲目から第10曲目(〈パレストリーナによるミゼレーレ〉〈アンダンテ・ラクリモーソ〉〈愛の讃歌〉)です。超絶技巧を多用したヴィルトゥオーゾとしてのリストはもはやどこにも感じられず、深い精神世界の広がる時間でした。

(A・H)

 

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