リスト・フェスティバルにおいて第3回目となるランチタイム・コンサート。今日はピアニストの斎藤龍さんが、リストのピアノ作品の中でも芸術の薫り高い《巡礼の年報 第2年 イタリア》を演奏されました。
この《巡礼の年報 第2年》は7つのピアノ独奏曲が集まって出来ており、絵画、彫刻、詩といった様々なジャンルの芸術作品が題目となっています。斎藤さんの奏でるピアノからは、あらゆるイメージの音が次から次へと現れ、この曲集に込められた各々の芸術作品の世界観を見事に表していました。最初の〈婚礼〉では、ラファエロの絵画に表れている温かな色彩が、次の〈物思いに沈む人〉では、ミケランジェリの大理石像に感じ取れる冷たさや緊張感が伝わってきました。〈サルヴァトール・ロッサのカンツォネッタ〉では、一転して場内の空気が軽くなったかと思えば、続く3曲の〈ペトラルカのソネット〉では、もの凄い情熱の波が打ち寄せてきます。
最後の大曲〈ダンテを読んで〉においては、斎藤さんの多彩な音色が最も活きていました。嵐の巻き起こるような激しいパッセージから、星の輝くようなミステリアスな装飾音まで、音楽が表現しうる全てのイメージを集結させたような演奏に、会場の拍手は鳴り止みませんでした。今日のコンサートで、リストという作曲家に関心を持つ方が、また増えてゆくのではと思います。
(A. T. )