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リストフェスティバル2011 in 表参道
イブニングコンサート 第1回 開催レポート
2011年10月24日(月)19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
主催:東京藝術大学音楽学部 協賛:カワイ音楽振興会
出演:川口智輝 喜多宏丞 高岡 準 竹内真紀

 今年生誕200年を迎えるフランツ・リストを記念して、パウゼでは東京藝術大学音楽学部による「リストフェスティバル2011 in表参道」が開催中です。本日はランチタイム・コンサート、公開講座に引き続き、第1回のイブニング・コンサートが行われました。

 若き日にヴァイオリンの鬼才、ニコロ・パガニーニの技巧に感銘を受け、自ら「ピアノのパガニーニになる!」と心に誓ったリスト。ピアノの演奏技術を極限まで開拓し、この楽器のために多くの華やかな作品を残した彼は、同時代のピアニストの中でもまさにカリスマ的な存在でした。中でもエチュード(練習曲)というジャンルは、彼のヴィルトゥオーゾ(名人演奏家)としての側面を最も色濃く映し出す、刺激に満ちた作品群といえるでしょう。今回は、普段あまり耳にすることのない初期作品も含め、エチュードを中心に様々なヴィルトゥオーゾ・ピースを集めた豪華な企画。4名の若手ピアニストが、それぞれの音楽性と技巧の限りを尽くして、巨匠の難曲に挑みます。

 トップバッターは、現在東京藝大博士課程に在籍中の喜多宏丞さん。演奏してくださったのは、リスト屈指のエチュード《超絶技巧練習曲》の原型となった、《12の練習曲 作品1》です。喜多さんの演奏の魅力は、なんといっても音楽そのものの表情の豊かさにあるといえるでしょう。迫力ある嵐のようなパッセージから気品に満ちた旋律まで、喜多さんは常に生き生きと、安定感をもって演奏されていました。

 つづいては、同大学修士2年の高岡準さんによる、《パガニーニの「鐘」によるブラヴーラ風大幻想曲》です。かの有名な《ラ・カンパネラ》と同じ主題に基づくこの作品は、極度の超絶技巧を演奏者に強いることもあって、一般的なコンサートではほとんど演奏されないといっても過言ではありません。この難曲を鮮やかに弾きこなせるテクニックは、勿論特筆すべきものでしょう。しかし、リストの音楽のスタイルを的確に捉えた高岡さんの表現、またその深みのある凛とした音色は、技巧の存在を忘れさせるほど、それ自体としての説得力をもっていました。

 三番目の演奏者は、現在同大学の講師を務めておられる竹内真紀さん。演奏された《2つの演奏会用練習曲》と《3つの演奏会用練習曲》は、いずれも詩的な標題を持つ小曲からなり、豊かなイメージを喚起する作品です。竹内さんのきめ細やかなタッチは、音楽の自然なうねりのなかで艶やかな音の襞を生みだし、印象派にも通ずる陰影に富んだ世界を創り出します。中でも、風にそよぐ木々を思わせる〈森のざわめき〉や、どこまでもしなやかにすり抜けていくような〈軽やかさ〉はまさに絶品。リストの新たな側面をも垣間見た気がしました。

 演奏会の最後を飾ったのは、同大学4年の川口智輝さんによる《パガニーニ大練習曲》でした。多彩な表情をもつこの6つの練習曲は、パガニーニの超絶技巧的なカプリースに基づいて作曲されたものです。川口さんの若々しくダイナミックな演奏は、ピアノという楽器の持つ無限の可能性を改めて実感させてくれました。

 

 リストの作品の魅力に加え、それぞれのピアニストの熱意や気迫の伝わってくる、大変聴き応えのある演奏会を、心より楽しませていただきました。リストフェスティバル、次回もどうぞご期待ください! 

(N.J.)

 

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