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日本ショパン協会 第256回例会
神野千恵 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.13》
2011年10月15日(土) 18:30開演( 18:00開場)
主催:日本ショパン協会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
10月15日、表参道のパウゼで、若手ピアニスト神野千恵さんによるリサイタルが開催されました。神野さんは桐朋学園大学卒業・同大学研究科を修了後、ジュネーヴで研鑽を積まれ、国内外のコンクールでも素晴らしい実績をお持ちの演奏家です。今回は完全帰国後初のソロ・リサイタルとのこと。その意気込みを反映してのことでしょうか。「前奏曲」をテーマに、ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンの珠玉の名作を詰め込んだ、実に贅沢な演奏会です。演奏者にとっては「重いプログラム」(神野さん)だったそうですが、聴き手としては最初から最後までとても聴きやすく、楽しめる内容でした。
まずはマイクを片手に、にこやかに登場された神野さん。上品なネイビーのドレスは、今回のプログラムの雰囲気にぴったりです。
ご本人による解説を交えながら、演奏会は和やかな雰囲気で進みます。
まずは、古代ギリシアの典雅な舞姫からパリの夜空を彩る花火まで、様々なイメージの世界に聴き手を誘う、ドビュッシーの前奏曲。続いては、同じく「前奏曲」と銘打たれているものの、うって変わって重厚なロマンを感じさせるラフマニノフ。休憩の前後には、前奏曲から離れて、ショパンの《スケルツォ第2番》と、有名な「遺作」のノクターンが演奏されました。洗練された音色と安定したテクニック、ほどよく抑制のきいた端正な表現は、どの作品にもしっくりとなじむものでした。
しかし筆者にとってとりわけ印象深かったのは、リサイタルの最後を飾るショパンの《24の前奏曲 作品28》です。この作品の魅力はなんといっても、すべて異なる調性(24調)で書かれた24の小さな前奏曲を通して、様々なタイプの音楽を一口ずつ一気に味わえることでしょう。ある時は愛らしく、ある時は深い物想いにふけるように、またある時には怒涛のごとく荒れ狂うそのさまは、まるで心模様の万華鏡のよう。神野さんは持ち前の細やかな感性で、それぞれの前奏曲の特色を丁寧に描き分けておられました。
アンコールには、おなじみの《ラ・カンパネラ》と《小犬のワルツ》。どちらも息をのむほどのあざやかな指さばきで、音楽を楽しみながら生き生きと演奏されている様子が伝わってきました。
親しみやすく魅力的なプログラムを通して、ピアニストとしての揺るぎない実力をみせてくださった神野さん。この演奏会が神野さんの一層のご活躍への「前奏曲」となることを、心より期待しています。
(N.J.)
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