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吉田友昭 ピアノリサイタル 開催レポート
《2010年 日本音楽コンクール入賞者シリーズ 》
2011年9月24日(土) 18:00開演(17:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 秋の空気が深まる9月24日、昨年の日本音楽コンクールで第1位をとった吉田友昭さんのピアノリサイタルがありました。その演奏を聴こうと、たくさんの方々が表参道「パウゼ」に集まりました。ローマ在住のピアニストの来日演奏を楽しみに待つ雰囲気がなんともわくわくしています。

 プログラムはどれもピアノ音楽の楽しみを感じることのできるものになっています。冒頭に置かれたハイドンのピアノソナタ変イ長調はさながら演奏会のプロローグ。吉田さんの手から繰り出されていくのは、大きな体をしたグランドピアノからとは思えないほど繊細で様々なニュアンスに満ちた音でした。続けてリストによるシューベルト作品の編曲。シューベルトの旋律という素材をリストがレシピ化し、吉田さんが料理したというようなもので、原曲のアピールはさることながら、遊び心も忘れない魅力的な演奏でした。

 リストのハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調では、〈ペシュトの謝肉祭〉というタイトルの通り、謝肉祭の楽しそうな雰囲気が存分に醸し出されていました。そんな自由で闊達な演奏に客席も盛り上がって、前半のクライマックスとなりました。

 後半はリストの〈バッハの動機による変奏曲〉で始まりました。リストのピアノ曲といえば技巧を尽くした見せものという印象もある一方で、芸術の深淵を真摯に求めるリストの姿も充分に認められるということを、私は今回の演奏で実感しました。バッハの動機とは、ロ短調ミサ曲「十字架につけられ」の通奏低音に用いられている半音下行の音型のこと。リストはこれを繰り返し様々なやり方で用いて、リストらしくも奥の深い楽曲に仕上げています。その精神性を表現しきった吉田さんの演奏に、客席からは驚嘆のため息が漏れたほどでした。

 プログラムの最後はショパンの作品です。〈2つの夜想曲〉(作品62)に触れるときは「いつも夕暮れの赤い空を思い浮かべる」という吉田さん。私にはこの一瞬が永遠とも感じられるかのような静謐さを感じた演奏でした。曲が終わるか終わらないうちに、続けて〈幻想ポロネーズ〉(作品61)の演奏が始まりました。なだれこむようにショパンのめくるめくロマンチックな語りかけが滔々と流れていきます。聴衆はその流れに心地よく身を委ねて聴き入り、最後の情熱的な盛り上がりのうちに締めくくりとなりました。

 カーテンコールで再登場した吉田さんのトークでは人柄の良さがにじみ出ていて、演奏する音楽もまた、柔軟で自由、自然体で音楽性豊かなものでした。聴き手一人残らず音楽に満足した演奏会でした。  

 (T.)

 

 

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