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片田愛理 ピアノリサイタル 開催レポート
《デビュー記念リサイタル》
2011年7月27日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 7月28日、片田愛理さんのピアノリサイタルがパウゼでありました。片田さんは現在東京音楽大学1年生で、すでに片手では数え切れないほど多くの国際コンクールで賞を取っているピアニストです。ご学友も多くかけつけ、客席はにぎやかに開演を待ちました。

 純白のドレスで現れた片田さんが始めに弾いたのは、シューベルトの〈即興曲〉Op.90-1。ハ短調の寂しげな旋律を、深い息をたっぷり使って演奏しました。テーマが変奏曲のように展開されていくにしたがって、演奏は切り替わっていつも新しく、しかしテーマの旋律がもつキャラクターはいつも底に流れている安定感がありました。

 スクリャービンの〈練習曲〉(3つの小品より)cis-moll Op.2-1で聴かれた陰鬱な表情も素敵だと感じました。グリンカ=バラキレフの〈ひばり〉にも東欧の香りただようシンプルなメロディーを息長く聴かせてくださいました。

 演奏は後半にかけて開放的な音楽性を得て、いっそうの豊かさが耳に心地よく流れてきました。ショパンに関しては、〈バラード〉第4番Op.52、〈舟歌〉Op.60、〈ピアノ・ソナタ〉第1番Op.4が組まれています。舟歌では、曲が進むにつれて中音域の充実感があふれてきて、感動的なクライマックスを迎えました。特に最後のアルペジオは大変みずみずしい響きで聴衆の心を捉えました。

 今回のメイン・プログラムと言ってもいいのは最後のピアノ・ソナタ。ショパン18歳の時の習作であり、形式に縛られすぎているという点から、演奏される機会は少ないのですが、片田さんの演奏を聴いて新しい発見をしました。ソナタという伝統的な形式に則ってもはみ出るほどのショパンらしい音使い、ユニゾンの平行音型、ゆったりとした波のようなおおらかさの出ていた4分の5拍子、不思議な感じを受けるが魅力的な和声。どの要素にも、後にショパンが円熟させることになる要素を多分に見出せます。第2番や第3番にはない、ある意味での早熟さが魅力なのだと思います。同年代の片田さんが演奏することとあいまって、その熱さはとてもよく伝わってきました。 片田愛理さん、今後のご活動を楽しみにしています。

(T.)

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