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第3回 グローバル・パートナーシップ・コンサート 開催レポート
2011年7月12日(火) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
7月12日、カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」で、第3回グローバル・パートナーシップ・コンサートが開かれました。このコンサートは協賛企業の支援のもと、事業収益をバングラデシュのNGOに寄付するものです。会場には、音大生や日本以外の方が多く見えました。主催であるルネサンス・プロジェクツ・ワールドワイドの浜野与志男さんと兼重稔宏さんが、バッハをテーマにピアノ演奏を繰り広げました。プログラムはJ. S. バッハの作品と、その編曲作品、その他バッハにちなんだ作品が並び、お二人のソロと四手連弾で構成されています。はじめに、浜野さんがバッハの幻想曲とフーガイ短調(BWV 904)を演奏。幻想曲の冒頭で、力強い和音とそこから紡ぎだされるメロディを堂々と奏し、会場の空気を一気に引き寄せました。幅広いダイナミクスと緩急をつけたテンポでの演奏に、バッハ演奏の新しい可能性を感じました。
兼重さんソロのプログラミングは、現代作曲家による作品と、バッハの《平均律クラヴィーア曲集》からプレリュードとフーガの一組を、交互に組み合わせています。おもしろいと思ったのは、金子仁美《フーガの方法 L’expression methodique d’une fugue》。ここでは、順を追って声部が出てき、対位法的に絡み合うというフーガの原則が提示されています。しかし主題にあたるものは、バッハのフーガのように動きのあるメロディではなく、同一音が一定の拍節を打つというもの。時折音が変化し声部が重なっていくことでフーガをなします。この新奇さを耳にして、動揺を隠せない人もいたようです。フーガを現代風に解釈するとこのようになるものかと、興味深く聴きました。
四手連弾では、第一奏者を浜野さん、第二奏者を兼重さんが担当。バッハやハンガリーの現代作曲家であるクルタークによる作品を演奏しました。どの曲目もメロディが自然と浮き立つもので、和声と躍動感をつくる低音部ときれいに絡み合う演奏に、聴衆はぐっと引き込まれて聴いていました。なかでもクルターク編曲の”O Lamm Gottes unschuldig”は、原曲がオルガン用であることを考慮のうえ、ストップ(オルガンの音を選択する装置)による音色づくりがピアノ演奏に反映されていて、奥の深い作品だと感じました。
アンコールにはシルヴェストロフのピアノ曲、第1楽章を浜野さん、第2楽章を兼重さんが演奏。聴衆は大満足の声援と拍手を贈りました。この演奏会は、お二人を含めた学生主体で運営されていたようで、演奏家や音楽が社会に積極的に関わろうとする姿勢を頼もしく感じます。彼らの姿を見て、音楽が人のためにできることがもっと大きく広がればいいなと思いました。
(T.)
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