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津嶋啓一 ピアノリサイタル 開催レポート
2011年6月10日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
今宵のプログラムは、ショパンの《バラード》を中心に、まさに名曲・難曲と呼ばれる演目が続きました。この長大なプログラムを見事にこなしましたのは、ヨーロッパで研鑽を積み、現在は後進の指導にも携わっているというピアニストの津嶋啓一さん。柔和な音色はもちろんのこと、会場の雰囲気を和ませてくれるような笑顔やトークも素敵な方でした。最初の演目であるベートーヴェンの<月光ソナタ>(正式には<幻想曲風ソナタ>)は、ベートーヴェンの生涯についての解説を伴っての演奏で、津嶋さんの堅実な音楽創りが光っていました。主となるメロディーだけでなく、伴奏にも丁寧に表情がつけられており、そのハーモニーが絶妙でした。
続くショパンの《バラード》は、全4曲から成る作品ですが、1曲ずつについて津嶋さん自身の楽曲への想いを語っての演奏でした。4曲とも素晴らしい演奏でしたが、特に印象的だったのは、ご本人も「今回のリサイタルのために練習しました。」と語っていました第4番でしょうか。ゆっくり回り続けるようなテーマのメロディーはオルゴールのような音色でした。曲が盛り上がってからは層の厚い響きで会場の空気を満たし、とりわけ難所だと言われるエンディングも艶やかに弾き切りました。また、静と動のコントラストが聴かせどころの第2番も、持ち前の繊細な音色で表情豊かにまとめていて魅力的でした。この第2番も、第4番に同じく終盤に難所がありますが、一瞬ごとの響きを丁寧に創り上げているのが伝わってきました。
最後の演目<アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ>は、ショパンの若かりし頃の作品ということで、活き活きと歌い上げていました。曲中に散りばめられた装飾が、太陽にきらめくさざ波のようで、美しい演奏でした。アンコールに選ばれたショパンの<別れの曲>では、お客様が皆静かに耳を傾け、今宵の素晴らしきソリスト津嶋さんとの別れを惜しんでいました。
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