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ドミトリー・シシキン ピアノリサイタル 開催レポート
〜今最も将来を期待される若き天才ピアニスト〜
2011年6月9日(木) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 6月11日、「ドミトリー・シシキン ピアノリサイタル」を聴きました。ロシア人のドミトリー・シシキンさんは、若干19歳、若き天才として注目のピアニストです。4年ぶりの来日ということもあり、会場には多くの聴衆がかけつけました。

 颯爽と登場し、第1音から彼の音楽の世界へと誘ってくれました。前半の演奏曲目は、以下の通り。

クープラン    《鳥たちの歌》
リスト      《ラ・カンパネッラ》S. 141-3
         《ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調》S. 244-4
シューマン    《子供の情景》より〈トロイメライ〉Op. 15-7
チャイコフスキー 《四季》より〈6月、舟歌〉Op. 37b-6
ラモー      《野蛮人》
モシュコフスキ  《火花》Op. 36-6
ラフマニノフ   《前奏曲》Op. 23-5
カプースチン   《8つの演奏会用練習曲》より〈トッカティーナ〉Op. 40-3

 まずこのプログラムからもわかるように、フランス・バロックからロマン派、そして近現代まで、実に多彩なレパートリーの持ち主だ、ということに驚かされます。そして、たとえばチャイコフスキーの《四季》で聴かれたような哀愁を帯びた旋律の歌わせ方などは、本当に絶妙な美しさでした。しかしやはり圧巻だったのは、リストの《ハンガリー狂詩曲》やラフマニノフの《前奏曲》などでの圧倒的なテクニックと力強さでした。まさに若い力がほとばしるようで、前半最後のカプースチンの演奏には、会場から感嘆の声がもれたほど。聴き手をぐいぐい引き込み、高揚させる力を感じました。

 休憩をはさんで、後半はオール・ショパンプログラムでした。

ショパン《マズルカ 変ロ長調》Op. 7-1
    《ノクターン 変ホ長調》Op. 9-2
    《プレリュード 変ニ長調》Op. 28-15「雨だれ」
    《エチュード 嬰ハ短調》Op. 10-4
    《ワルツ ホ短調》(遺作)
    《ワルツ 変ニ長調》Op. 64-1「小犬」
    《ポロネーズ 変イ長調》Op. 53「英雄」
    《スケルツォ 第2番 変ロ長調》Op. 31

※前後半とも、一部事前のプログラムから変更がありました。

 有名な曲が並びましたが、型にはまった演奏ではなく、随所で彼の個性が光っており、新鮮な気持ちで楽しむことができました。透き通った音で紡ぎだされる旋律は、抒情性にあふれていました。そして、平均的な演奏よりもやや速めに弾かれた「英雄」ポロネーズや《スケルツォ》は、爽快で輝かしい表現で聴き手を魅了していました。

 盛大な拍手に、アンコールにシューマン《スペインの歌芝居》より〈密輸入者〉Op. 74-10とプロコフィエフ《練習曲 ハ短調》Op. 2-3が演奏されました。そして日本での震災に胸をいためていたというシシキンさん、「ぼくたちは1つです」という日本語でのコメントの後、《ふるさと》を演奏。心に染み入るやさしい音楽で、今宵のコンサートは締め括られました。

 彼の才能が存分に発揮された、素晴らしいひとときでした。また日本で聴くことのできる日を楽しみにしています。 

(M. K.)

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