KSCO
中井恒仁&武田美和子
ピアノデュオシリーズ 開催レポート
〜ピアノデュオ世界旅行 Vol.4
「音楽の都 ウィーン」〜
2011年5月28日(土) 17:00開演(16:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
中井恒仁さん、武田美和子さん夫妻の演奏会を「パウゼ」で聴きました。今回のテーマは「音楽の都 ウィーン」ということで、ウィーンで活動していた作曲家達の連弾・2台ピアノ作品を集めた大変魅力的なプログラムです。当日はあいにくのお天気のなか、大勢のお客様が駆け付け、大盛況となりました。
さすがはデュオを専門に活動されているお2人。どの曲も、息がピッタリです。チェルニーの《性格的で華麗なる変奏曲》や、シューベルトの《ファンタジー》、シュトラウスの《美しき青きドナウ》など、性格が異なる作品も巧みに弾きわけ、表現されているのが印象的でした。どの作品でも2人の奏者が同じ音世界を頭に思い描いているからこそ、このようなハイレヴェルな表現が可能なのでしょう。これほど細部までピッタリと合い、かつ自然な流れを失うことのない音楽は、一度きりのデュオにはなかなか出来ないものです。
とりわけ強い感銘を受けたのは、ラヴェルの《ラ・ヴァルス》。もやもやとした雰囲気から始まり、次第に高揚していき、最後は白熱の大音響で壮大なフィナーレを迎えます。この曲はオーケストラ版も魅力的ですが、圧倒的なグリッサンドなど技巧的な要素は、2台ピアノならではでしょう。繊細さから豪快さまで備えたこのデュオの魅力が存分に発揮された名演でした。
休憩を挟み、後半はまず「のだめカンタービレ」でもお馴染み、モーツァルトの《2台ピアノの為のソナタ
ニ長調》K.448を演奏。中井さんのお話によると、この曲はある科学雑誌に「聴くと頭が良くなる音楽」として紹介されたことがあるそうです。その真偽はともかく、お2人の奏でる美しい演奏を聴いて、多くのお客様が特別な心地よさを感じられたことでしょう。
最後はリストの《ドン・ジョヴァンニの回想》。お2人の高度なテクニックが際立つ演奏で、華麗に締めくくりました。
盛大な拍手に応え、お2人はアンコールにブラームスの《ワルツ》、《ハンガリー舞曲第5番》、シュトラウスの《ラデッキー行進曲》を演奏。特に《ラデッキー行進曲》はお客様の手拍子と共に演奏され、大いに盛り上がりました。
演奏会終了後は、皆さまサービスとして出されたドリンクを飲みながら出演者とお話したり、お友達と演奏会について語り合ったりと、楽しいひと時を過ごされていたようです。ピアノ・デュオでのレギュラー活動を続けているピアニストはそう多くはないと思います。その意味で幅広いレパートリーを持ち、かつハイレヴェルな演奏を聴かせてくれる中井&武田のデュオは大変重要な存在といえるでしょう。また演奏だけでなく、クラシックコンサートでは珍しく、曲間にトークを挟み、分かりやすく解説してくださるスタイルも、とてもよかったです。これからも日本を代表するピアノ・デュオとして、素敵な演奏を聴かせてください!
(M.S.)
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