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中井正子公開講座 開催レポート
〜ピアノテクニックシリーズ第2回(全5回シリーズ)〜
2011年6月17日(金) 10:30 開演(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 フランス音楽のスペシャリスト中井正子先生による公開講座『ピアノテクニックシリーズ』。第2回目はバッハの≪インヴェンション≫についてです。今回は、先生ご自身が演奏の手引を手掛けられた楽譜に基づき、全15曲をどのように解釈すればよいのかということについて実演を交えお話し下さいました。先生の丁寧でわかりやすいレクチャーに、会場のお客様は熱心にメモを取りながら耳を傾けておられました。

 まず、作品の背景について説明して下さいました。≪インヴェンション≫は、バッハが当時の最優秀な生徒たちへ向け、2声や3声がはっきりと弾けるようになること、歌うような奏法を身につけること、作曲への強い関心を養うことなど、演奏と作曲の両方が勉強できるようにという教育目的で作曲されました。これら15曲はすべて異なった調性で書かれ、同主調同士が組み合わされて配列されているため、調性の違いを意識しながら学ぶことが大切であるのだそうです。

 続いて<第1番ハ長調>を例に、≪インヴェンション≫の特徴などを解説して下さいました。≪インヴェンション≫は、声部数が2声に限定され、主題が模倣されながら発展していきます。それゆえ両方の声部が同等の価値を有しているとのことです。演奏する際のポイントは、主題が開始するときは音を繋げず、それがわかるように演奏すること(3〜4小節目での主題の反復など)、音価の長い音符やタイで繋げられた音符は、最後まで耳を傾けること(15小節目から登場するタイで繋げられた2分音符など)、終止形を大切にすること(各部分の終わりと次の部分への和声的な暗示を示している)、左右の声部が同等の価値が求められるため、両方が独立し横の流れで弾けるようになどといったことをお話しされました。練習する際は、まず、全体を両手で弾きある程度指使いなどが決まったら、各部分ごとにわけて片手ずつ練習し、それができるようになると再び両手で、今度はどちらかの声部を歌いながら練習するとよいとのことです。この歌いながらの練習は、ピアノと声が違う音色であるために、両声部を横の流れで聴いていくことを養うのだそうです。

 以上の説明を踏まえた上で、各曲の特徴を解説して下さいました。

<第2番ハ短調>は両声部が追いかけるようなカノンで書かれており、レガート気味で重みをかけて演奏すると良いそうです。なお、当時のトリルは上から演奏するとのことです。

<第3番ニ長調>と<第4番ニ短調>では、両方とも3拍子の舞曲で書かれ終止の前にヘミオラが登場します。このヘミオラは3拍子を2拍子で奏し、インテンポにブレーキをかける役割があります。この際、2拍子を感じながらも、3拍子の1拍目を忘れずに意識することがポイントだそうです。また、<第3番>は協奏曲風なリトルネッロ形式で書かれており、<第4番>では、主題を弦楽器のデタシェ奏法(フレーズをひと弓で奏する奏法)を感じて弾くと良いとのことです。

<第5番変ホ長調>では、ここで初めて主題とその応答が登場しフーガとなります。

<第6番ホ長調>はシンコペーション、リズムの感じ方、細かい音符の弾き方の練習です。また、29小節目からの部分は響きごとに音色の違いを感じ取って演奏すると良いそうです。

<第7番ホ短調>は、主題が短く、模倣の感覚を短縮し緊張させるストレッタ(11小節目から)や通奏低音(15小節目から)が登場します。

<第8番ヘ長調>は、カノンで書かれ、指を動かすための練習曲的な要素が強く、また、トッカータのような曲想が特徴だそうです。

<第9番ヘ短調>は、先ほどとは対照的に表情豊かに弾く練習です。演奏する際、ペダルは音を繋げなくてはならないところや、終止でリタルダンドをするときなど、最小限に用いると良いとのことです。

<第10番ト長調>は分散和音の練習で、即興的に書かれています。また、楽譜にはsempre non legatoと指示されていますが、スタッカートのように音を切らず、指を上げて演奏すると良いとのことです。

<第11番ト短調>は表現の練習で、ここでは半音階が登場しますが、バロックの表現で痛みや悲しみなどが表されています。

<第12番イ長調>は、左手のポジションの練習で、即興的な反復から成っています。

<第13番イ短調>は、主和音と属和音による分散和音の繰り返しで、減七の和音や、不協和音のぶつかり合いなどを感じることが大切なのだそうです。

<第14番変ロ長調>は装飾音の練習で、正確なテンポで演奏することが求められます。なお、15曲中で唯一主題の模倣が行われていない作品です。

<第15番ロ短調>は、主題と応答で書かれていますが、登場する順序が異なったりと、気まぐれな作風で書かれているとのことです。

 紙面に書ききれないほど多くのことが学べた中井先生の公開講座。≪インヴェンション≫は一見シンプルな作品ですが、その中にも非常に多くの要素が凝縮されていることがわかり、改めてこの曲集の素晴らしさが実感できたように思えます。次回は7月20日、バッハのシンフォニアについてです。

(K.S.)

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