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中井正子公開講座 開催レポート
〜ピアノテクニックシリーズ第1回(全5回シリーズ)〜
2011年5月9日(月) 10:30 開演(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 フランス音楽のスペシャリストで、パウゼでもドビュッシーやラヴェルなどのレクチャーコンサートでお馴染みの中井正子先生による公開講座≪ピアノテクニックシリーズ≫が開催されました。このシリーズは、全5回にわたりバッハからショパンまで、時代ごとの解釈と結びついたピアノテクニックについて、実演を交えお話し下さるというものです。第1回目となる今回のテーマは、『ハノン 音楽的な表現を求めて基本からやり直すテクニック』。≪ハノン≫の中でも音楽の基本となる第2部の「スケール」と「アルペジオ」を中心に、そして≪ツェルニー100番練習曲≫も触れられ、ただ指を動かすだけではなく、音楽を表現するためにはどのように弾いたら効率的かということをお話し下さいました。この日は、ピアノの先生方をはじめ多くのお客様が先生の丁寧でわかりやすいレクチャーに熱心に耳を傾けておられました。

 前半は、「スケール」の説明の前に「姿勢」や「ペダル」についてお話し下さいました。ピアノを弾く時の基本の姿勢は、座って手を鍵盤に置いたとき、腕が肩の線から自然におりてくるように座り、そして上半身が自由に動けるように、腹筋を使って下腹で重心を支えることだそうです。ペダルについて、「ダンパーペダル」は、音楽的に演奏するために重要な、音のニュアンスや響きを豊かにさせるために用いるもの。「ウナ・コルダ」は、ただ弱くするだけでなく、時代によって、音色の変化のためにも用いるもの。1つの音を伸ばしたままでほかの音を弾くことができる「ソステヌート・ペダル」は、現代曲ではよく用いられますが、クラシック音楽においても上手く用いればよいということなどを説明して下さいました。

 これらの基本を踏まえた上で、次は「スケール」についてです。「スケール」は、本来オクターブが連なったものということを意識して学ぶとよいとのこと。オクターブ(7連符)、楽譜の通りの4連符、そして3連符と、3つのパターンで通して練習することで、早い時期からこの感覚に馴染んでおくと、作品中に複雑な連符が登場したときに対応しやすくなるとのことです。タッチの面では、まず、指をきちんと動かせるようになるためにマルカートで練習し、それができるようになると今度は、指先で弾く練習を行うこと。その時、第1関節がフニャフニャと反らないように、また、ガチガチに硬くならないように注意し、フレキシブルに動くようにすることが大切と説明されました。さらに、手首からや、肩からなどといった様々なタッチで練習をし、自分の手のどの部分を使うかを学ぶことが、音楽の表現の幅を広げることにつながるのだそうです。いかなる場合でも手の甲の関節の支えをしっかりとさせることが大変重要とのことでした。その他、右手をディミヌエンドしながら左手をクレッシェンドさせたり、両手でpからfにしたり、またはそれらの逆を弾いたりなど、バランスの違いを意識した練習を行うと、例えばベートーヴェンの≪ピアノ協奏曲第3番≫の冒頭のユニゾンなど実際に作品に触れる上でとても役に立つともお話し下さいました。

 「スケール」の最後に登場する「カデンツ」は、調性感覚を身につけるために大変重要なもので、ペダルをつけて、ハーモニーのバランスなども意識しながら練習すると、音を聴くようになりバランス感覚を養うとのことです。この「スケール」や「カデンツ」は、平行調を組にして行い、なるべく早いうちに全調を学習すると、将来、色々な調性に対応できるようになると説明されました。

 休憩を挟み後半は、まず「アルペジオ」についてです。方法としては基本的に「スケール」と同じですが、和音のかたまりを意識して3連符や4連符などで練習をするほか、1の指をくぐらせる時は、上行では1の指が下に行くことを、下行では3や4の指で作られた空間をくぐることを意識すること、そして、「スケール」と一緒に練習するとよいとのことでした。

 その他、40番の「半音階」では、「スケール」と「アルペジオ」のときは指使いをきちんと守らなければならないのですが、ここでは自由に用いてよいことや、50番の3度のレガートでは長三和音、短三和音、減三和音で続けて練習するとよいこと。「カデンツ」など、大きくどっしりと弾く時は背中の筋肉を使うとよいこと。また、腕の外側(1の指側)の筋肉と内側(3、4、5の指側)の筋肉の違いを意識し練習すると大曲を弾く際に役に立つことなど、多くの説明がなされました。

 最後は、≪ツェルニー100番≫についてです。例えば、20番の左右のシンコペーションの練習では、鳴った音だけでなく伸びている音も聴きバランスを意識すること、54番では、2連符と3連符をきちんと弾くことなど、≪ハノン≫で学ぶことを応用でき、かつ、1曲が短い分、様々なテクニックがまんべんなく学習できるとお話し下さいました。

 非常に盛りだくさんな内容で、密度の濃い中井先生の公開講座。一見、メカニックな練習曲に思われる≪ハノン≫について、実は音楽を表現する上で大切なエッセンスが凝縮されているということを学べた大変有意義な講座でした。次回は6月17日で、バッハの≪インベンション≫を取りあげられるとのこと。期待大です。

(K.S)

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