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渡辺友理ピアノリサイタル 開催レポート
〜第16回ショパン国際ピアノコンクール日本人最高得点にてディプロマ受賞〜
2011年
4月26日(火) 19:00開演( 18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 4月26日、「渡辺友理 ピアノリサイタル」に行ってきました。渡辺友理さんは高校2年生でイタリアへ単身留学し、現在はイタリアのイモラ音楽院に在学中の若手実力派のピアニストです。音楽の勉強の傍ら、ボローニャ大学(外国言語・文学学部)にも在学し、語学の研鑽も積んでいらっしゃるようで、充実した留学生活が窺われます。また、渡辺さんは2010年第16回ショパンピアノコンクールで第2次審査まで進み、日本人最高得点にてディプロマを受賞なさっています。そんな渡辺さんへの期待が高まる中、会場は満員御礼でした。

 本日の演奏会は前半に3曲、休憩をはさみ、後半に3曲というプログラム構成でした。

 シューベルト《ピアノ・ソナタ第13番》D. 664は、後期の同じイ長調のピアノ・ソナタ(D. 959)と区別して「小さなイ長調ソナタ」と呼ばれており、技術的には比較的容易だと思われている作品です。ですが、軽やかでなめらかな旋律を聞かせながら、和声を担う内声と伴奏を充実させることは、決して簡単なことではありません。渡辺さんは各パートの役割をバランスよく保つことで、この曲全体に漂う女性的な優しさを十分に表現なさっていました。

 次に、ショパン《ノクターン》op. 55-2と《幻想ポロネーズ》op. 61を続けて演奏してくださいました。《ノクターン》op. 55-2では、息の長いフレーズを途切れることなく歌いあげる渡辺さんのフレーズ作りがとても印象的でした。ショパンの手紙によく見られる、「歌を大事にした」演奏だったように思います。《幻想ポロネーズ》で表現されているものは、具体的な情景や物語ではなく、ショパンの精神状態そのものであるように思われますが、渡辺さんもこの曲の解釈にはずいぶん時間がかかったということでした。しかし、今日の演奏からは渡辺さんの表現や想いがよく伝わってきて、聴き手の心に響く演奏でした。

 後半はリスト《3つの演奏会用練習曲》第3番「ため息」で始まりました。左手の広範囲にわたる分散和音の伴奏にのって、右手と左手で交互に演奏される冒頭の感傷的な旋律は、私たちの耳に非常に心地よく響き、曲が終わってしまうのが惜しいくらいでした。続けてリストからもう1曲。《パガニー二による超絶技巧練習曲》第2番「オクターヴ」では、オクターヴで駆け下りる重厚感のある音響と、高音での高速パッセージによる軽やかな音響との対比を楽しむことができました。

 本日のフィナーレの演奏は、ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第21番》「ワルトシュタイン」でした。なんと体力と集中力を必要とするプログラムなのでしょう。ただただ驚くばかりです。個人的には、第1楽章で特に感銘を受けました。この第1楽章は大部分が不安と緊張に支配されていますが、その中にもふと解放される部分があります。渡辺さんの演奏を通して、解放される瞬間の喜び、そして再び緊張へと戻る瞬間の不安感をお客様も共有されていたのではないかと思います。

 プログラム終了後には、渡辺さんに惜しみない拍手が送られていました。その後、アンコール1曲と、渡辺さん本人から短いお話しがあり、温かい雰囲気の中、演奏会は幕を閉じました。

 渡辺友理さんの今後のご活躍が楽しみです。

 (A.H.)

 

6月・7月にパウゼでリサイタルされる片田愛理さんも来場されました。

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