トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2011年 > 渡辺敬子 ピアノリサイタル > 開催レポート

KSCO
渡辺敬子ピアノリサイタル 開催レポート
2011年4月20日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 4月を迎えた表参道にはフレッシュな雰囲気に満ちています。今回、ピアニスト渡辺敬子さんのリサイタルを「パウゼ」で聴きました。渡辺さんは東京藝術大学を卒業後、イタリアで研鑽を積み、昨年より日本で活動なさっています。プログラムは、相反する二つのものの関係性に焦点を絞って組まれています。

 最初の曲目は、シューマンの《蝶々》(作品2)です。シューマンの音楽の特徴の一つとして、二つの正反対のキャラクターの提示が挙げられます。この曲で描かれているのはまさに「夢想」と「行動」で、渡辺さんはその二面性をうまくコントロールしながら表現していました。音色の選択は独特で、12曲すべてそれぞれが異なっていて繊細な色使いならぬ音使いを感じました。

 シューベルトの《3つのピアノ曲》(D. 946)の第1曲は、同じテーマを長調と短調で並べる独自の手法による作品の中でも深い精神性を感じさせるものです。変ホ短調で始まるこの曲は、推移部分を挟んで同じテーマを変ホ長調で繰り返すのですが、このとき渡辺さんはウナコルダ・ペダルを使って艶容というほどの音色で異様さのある明るさを醸し出し、人の心の奥底に潜む説明できない感情を表現しているようでした。

 相反するものを続けて表現しようとすると、心は引き裂かれたようになり、テンポや譜面を守ることが難しいように思うのですが、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番嬰ハ短調(Op.27-2)の演奏でその心配は全くありませんでした。抜群のスピード感があり、技術的な問題を少しも感じさせないテンポ管理が耳に心地よかったです。第1楽章では聴き手が深い波にさらわれて行きそうな中でもしっかりと一定の刻みは守られていましたし、第3楽章の荒れ狂う嵐のなかでは快速な走りからリタルダンドをかける具合がとても自然でした。

 プログラムを終えると渡辺さんは、昨今の震災の被害者の方々への祈りを口になさった後、スクリャービンの《左手のための小品》よりプレリュードをアンコールに弾いてくださいました。甘い旋律も物憂げな伴奏も左手だけで弾いているとは信じがたく、日常生活に不足がない自分の環境に感謝の想いを新たにした一夜でした。

(T.)

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2011年 > 渡辺敬子 ピアノリサイタル > 開催レポート