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KSCO
塩塚美知子ピアノリサイタル
2011年3月9日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

中 一乃(1st Vn.)、眞中 千晴(2nd Vn.)、茂木 新緑(Vc.)、眞中 望美(Va)、塩塚 美知子(Pf.)

 3月9日、ピアニスト塩塚美知子さんによるピアノリサイタルがカワイ表参道「パウゼ」で行われました。春らしくなってきた天候にぴったりの温かい雰囲気の演奏会で、たくさんの方がお越しになりました。

 深い青色のドレスで現れた塩塚さんが最初に演奏したのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第28番イ長調(Op.101)。ベートーヴェンは生涯のうちに幾度となく作風を変化させていますが、今回演奏されたのは後期の作品で、ロマン派的な自由さと幻想的なところに特徴があります。塩塚さんの演奏は、ベートーヴェンの後期の特徴を生かした、ファンタジックで端正な演奏だと感じました。たとえば冒頭楽章は何か確固としたものを提示するというよりは、どこからともなく流れてきた小川のせせらぎのように語り始めますが、その振る舞いは強制的ではなく、自然体でリラックスした状態を促すような演奏で、聴いていて開放的な気分になりました。第3楽章では、特にソフトペダルによる音色の変化が効果的で、他の部分との音響上の対比を楽しみました。最後の部分の壮大なフーガは堂々としていて、声部間のやりとりは歯切れ良く、そうした快奏に大きな拍手が送られました。

 次の曲目は、古曽志洋子のピアノのための組曲「感傷的な風景」です。この曲は、塩塚さんがずっと心の中にあたためていたもので、今回のリサイタルが演奏の時だと直感したそうです。聴いていると、3曲あって3曲それぞれに異なる情景が浮かび、情趣に富む音楽だと感じました。全音階の使用や、6度間隔の並行移動といった作曲上の仕組みをうまく生かしながら、聴き手のイメージを豊かに耕してくれる演奏でした。

 後半は、4人の弦楽奏者とともに、シューマンのピアノ五重奏曲変ホ長調(Op.44)の演奏です。この曲でピアノはリピエーノ(オーケストラ)的な存在として、弦楽四部をひきたてたり、弦楽と音楽的に対立したり、調和したりします。ピアノパートはそうした役割を十二分に果たしていて、全体としてシューマンらしいきらびやかな音楽世界の表現に聴き入りました。

 アンコールには、シューマンの《トロイメライ》。音で華やかに彩られた会場が徐々に現実に戻っていくのを感じました。総じて、現実から少し離れ、素敵な気分を味わった一夜でした。みなさまも演奏会を聴きに「パウゼ」へお出かけしてみてはいかがでしょうか。

(T.)

作曲の古曽志洋子先生(中央)

 

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