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居福健太郎 ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.16》
2011年3月4日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 3月4日パウゼにて、居福健太郎さんのリサイタルが開催されました。居福さんは、東京芸術大学大学院を修了後、現在は東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校で教鞭をとられる傍ら、ソロだけでなく、室内楽や歌曲伴奏などアンサンブルピアニストとしても活躍されています。

 今回のプログラムは、ハイドン、ドビュッシー、スクリャービン、シューベルトと非常にバラエティに富んでおり、また、居福さんの「好きな作品」でもあるとのことです。音色が表情豊かで美しく、作品に対する真摯な姿勢が伝わってくるような演奏に、お客様は聴き入っておられました。

 リサイタルは、ハイドンの≪アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII-6≫で幕を開けました。当時の器楽曲は長調のものが多く、このように短調の曲が作曲されるときは、人間の内面的な深い悲しみなどが反映されているといわれています。この作品もそのひとつで、敬愛する2人の友人(モーツァルトとウィーンの貴族ゲンツィンガー夫人)の死が背景となっています。ヘ短調の主題では、友人たちの死に対する深い悲しみを表しているように、それに対して、ヘ長調の主題が現れる部分では、楽しかった想い出を回想するような演奏をされ、聴いていて大変胸を打つものがありました。

 続いて、古典派から一気に時代が進み、ドビュッシーの≪ベルガマスク組曲≫とスクリャービンの≪ソナタ第5番 Op.53≫が演奏されました。まずはドビュッシーです。この作品は、「プレリュード」、「メヌエット」、「月の光」、「パスピエ」の4曲から構成され、ロココ的で古風なスタイルと、印象主義的な和声でもって作曲されており、幻想的で香り高い演奏を。一方スクリャービンでは、ドビュッシーとは対照的に、鮮やかで、作品の明確な方向性が感じられるような、しっかりとした演奏を聴かせて下さいました。居福さんによると、この2人の作品を選ばれたのは、音楽の中に流れる色彩や、香りなどといったものに共通点があるのではと考えられたからのことです。曲想は対照的でしたが、互いに違った形で、それらの要素が表現されていることを感じられ、興味深いものでした。

 休憩を挟み後半は、シューベルトの≪ソナタ第17番 ニ長調 Op.53 D.850≫です。めまぐるしい転調を繰り返し、生き生きとした第1楽章、壮大で天上的な美しさを持つ第2楽章、民俗色が濃く、活発なスケルツォの第3楽章、愛らしく軽やかな第4楽章。このソナタは、作曲家としての地位を確立したころのもので、明るく希望に溢れています。そのような背景が手に取るように伝わってくるような素晴らしい演奏でした。筆者は、今回の演奏を聴き、シューベルトは居福さんのお得意とされる分野かもしれないと思っておりましたが、終演後にお話を伺ったところ、今回シューベルトの作品を初めて取り入れられたとのことで、大変驚きました。

 この日、アンコールは2曲演奏して下さいました。1曲目はシューベルトの≪ワルツ≫。非常に珍しく、滅多に演奏されることのない作品のようで、筆者も初めて耳にしました。この作品は、シューベルトが1826年に友人クーベルヴィーザーの結婚式のために作曲されたもので、後の1943年にR.シュトラウスが書き写したものが今日に伝えられているのだそうです。ゆったりとして、温かみのある曲でした。そして、2曲目にドビュッシーの≪前奏曲集第1巻≫より「ミンストレル」が華やかに演奏され、盛大な拍手が贈られました。 

(K.S.)

 

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