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梅村百合&西室満美 〜ソロと2台ピアノの夕べ〜 開催レポート
《桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズVol.12》
2011年2月23日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 2月23日パウゼにて、『梅村百合&西室満美 〜ソロと2台ピアノの夕べ〜』(桐朋学園 表参道サロンコンサートシリーズvol. 12)が催されました。ピアニストの梅村さんと西室さんは共に、桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学を経て、同大学研究科を修了していらっしゃいます。また、これまでに数々のコンクールで優秀な成績を収められ、国際アカデミーにも多く参加なさっています。今後のご活躍が楽しみなお二人なだけに、会場は満員御礼で、追加で椅子を出すほどでした。

 今日は前半にソロ(すべてショパン)、後半にデュオという2部構成のプログラムでした。

 まず、西室さんが《ポロネーズ 第1番》op. 26と《アンダンテ・スピアナートと大ポロネーズ》op. 22を続けて聴かせて下さいました。《ポロネーズ 第1番》は複合三部形式(=ABAの各部分がさらに3つに区分できる)から成っています。西室さんの演奏からは、Aでは鋭いリズムと力強い響きによって英雄的な力強さを、一方でBでは、充実した和声や特に上声部に施された細かく豊かな装飾によって抒情性を聴くことができました。全く対照的な雰囲気がよく伝わってきました。

 《アンダンテ・スピアナートと大ポロネーズ》の大ポロネーズの部分はもともと、ピアノとオーケストラのために作曲され、その後1838年にピアノ独奏用の楽譜が出版されました。この曲は演奏効果のあるピアニズムで書かれ、全体的に華やかですが、西室さんの演奏はそれだけではなく、高音域での即興的な装飾へも気配りが感じられました。それは、鍵盤上にふっと息を吹きかけたかのようで、優しさの中にはかなさが聴き取れ、これによってより魅力的な演奏になっていました。

 代わって梅村さんが登場し、《バラード》第3番op. 47と第4番op. 52を演奏して下さいました。「バラード」という名称をピアノ曲に用いたのはショパンが最初ですが、直接的には、ポーランドの愛国的な詩人アダム・ミツキェヴィチの詩(「バラッド」)からインスピレーションを得たと伝えられています。第3番は「水の精」という題の詩に基づいているようですが、梅村さんの演奏からは起承転結を感じることができ、その詩がどのような内容であったのか想像してしまったほどです。第4番はショパンの創作の絶頂期(1842年の夏)の作品で、4曲のバラードの中でも最高傑作と考えられています。技術的にも表現内容的にもかなり高度なことが要求されますが、見事な演奏に大きな拍手が送られていました。

 後半は舞台に2台のグランドピアノが並び、見た目にも豪華になりました。後半最初の曲はドビュッシー《小組曲》。この曲はドビュッシーの連弾曲の中でも特に広く親しまれ、演奏される機会も多いですが、お二人の演奏で一番印象に残ったのは、第1曲目「小舟にて」でした。低音部パートの流れるような分散和音の上で、高音部パートのメロディーが漂う様は、本当に水が流れ、時々流れがゆっくりになったり、止まってはまた流れ出すようで、とても自然な音楽作りでした。

プログラムの最後の曲は、ショスタコーヴィチ《組曲》でした。前の《小組曲》は連弾だったのに対し、こちらは演奏形態を変え、2台ピアノです。曲は「前奏曲」「幻想的舞曲」「夜想曲」「終曲」の4つから成っています。全体を通して、ショスタコーヴィチ独特のリズムが前面に押し出される一方で、突然甘美な旋律が挿入されるなど、その変化が聴き手の耳を楽しませ、個人的には、今日の演奏会の中で最も心に残った演奏でした。

 お客様からの大きな拍手に応え、アンコールとして、ドビュッシー《子供の領分》より「ゴリウォーグのケーク・ウォーク」を連弾で演奏して下さいました。

 1度の演奏会で、ソロ、連弾、2台ピアノを聴くことができ、それぞれの響きの違いを楽しむことのできる演奏会だったと思います。

(A・H)

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