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ショパン・フェスティバル2010in表参道
小林仁 企画・編曲 室内楽コンサート 開催レポート
〜ショパンの4 曲のオーケストラを伴う全作品、ピアノと弦楽合奏の室内楽編曲版 〜
2010年6月5日(土) 15:00開演(14:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
主催:日本ショパン協会
共催:カワイ音楽振興会
ピアノ:小林仁 魚谷絵奈 奈良希愛 根津理恵子 白石光隆
ヴァイオリン:瀬崎明日香 甲斐摩耶 ヴィオラ:西村眞紀 坂口弦太郎 チェロ:上森祥平 コントラバス:渡辺玲雄
表参道で行われているショパン・フェスティバル2010もついに最終日を迎えました。振り返れば14日もの間、「パウゼ」では毎日ショパンに関連する催しがあり、多くのショパン・ファンが彼の生誕200周年をお祝いして参りました。千秋楽を飾るのは、日本ショパン協会会長の小林仁先生の企画による室内楽コンサート。ショパンが書いたオーケストラを伴う作品すべての室内楽編曲版、それも今回の演奏会のために小林先生が編曲なさったバージョンでの演奏会です。
ショパンの室内楽の導入として演奏されたのは、J. S. バッハの『音楽のささげもの』より「6声のリチェルカーレ」です。この曲は編成の指定が書かれていませんので、さまざまな編成の可能性があります。本日はヴァイオリン(瀬崎さん)、ヴィオラ(坂口さん)、チェロ(上森さん)、コントラバス(渡辺さん)1声部ずつに、ピアノ(小林先生)は2声部を担当しました。6声のフーガの厳格な展開は、室内楽編成で演奏することでパート間の対照がきわだち、色濃い演奏となりました。
ショパンのオーケストラを伴う作品はコンチェルトを除いて4曲ありますが、これらはあまり演奏される機会が多くありません。しかし、6人前後からなる室内楽編成であれば最小限の充分な音の幅を表現することができることから、今回のような企画が生まれた、との小林先生からのお話がありました。
4曲はどれも17~20歳の時の作曲で、ショパンの若いエネルギーに溢れています。《ドン・ジョヴァンニの〈お手をどうぞ〉による変奏曲》作品2では、序奏、主題、5つの変奏、終曲からなり、主役はピアノ(魚谷さん)で華やかに技巧を魅せる一方で、変奏と変奏の間に挿入されるリフレインでは弦楽合奏による幕間劇が主役をもりたてていました。作品14の《クラコヴィアク》もピアノ(奈良さん)が主役で、鄙びた旋律と跳ねるリズムを茶目っ気たっぷりに聴かせました。休憩後の作品13《ポーランド民謡による大幻想曲》では特にピアノ(根津さん)の歌心ある表現が、弦楽合奏(Vnは甲斐さんも、Vaは西村さん)と非常に合っていました。最後は独奏曲としては有名な《アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ》を小編成オーケストラで。ピアノ(白石さん)の卓越した独壇場と、その土台をつくる弦楽パートの仕事は、お互いを信頼していなければ不可能なものだったでしょう。ショパンの室内楽もまた、彼の繊細な感性を感じ取れる作品群だと思いました。
(T.)
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