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 ホーム(ニュース) > ショパン・フェスティバル2010in表参道 ショパンとドビュッシーの練習曲をめぐって 開催レポート

ショパン・フェスティバル2010in表参道
レクチャー(講師:青柳いづみこ)
ショパンとドビュッシーの練習曲をめぐって 開催レポート
2010年6月4日(金) 11:00開演(10:30開場)
主催:
日本ショパン協会
共催:カワイ音楽振興会

  

  

 「ショパン・フェスティバル2010 in 表参道」も残すところあと2日となりました。今日のお昼の部は、「ショパンとドビュッシーの練習曲をめぐって」と題されたレクチャーです。講師は、文筆家としても有名なピアニスト、青柳いづみこ先生。筆者も新聞・雑誌などで先生の音楽に関するエッセイを何度か拝見したことがあり、今日のレクチャーをとても楽しみにしていました。

 今回のレクチャーは、「練習曲」の歴史を塗り替えたショパンの《練習曲集》作品10&25と、この作品から大きな影響を受けて生み出されたドビュッシーの《練習曲集》を、実演を交えて比較しつつ、そのピアニズムを明らかにするという内容でした。

 まずは同時代の証言や論文を引用しながら、ショパンとドビュッシー自身のピアノ演奏について考察したのち、本題である両作曲家の《練習曲集》の比較検討を行いました。

1、ドビュッシー「5本指のための」の背景 
2、親指の分離 ショパン「作品10-8」とドビュッシー「8本の指のための」 
3、重音の練習曲 ショパン「作品25-6」「作品25-8」とドビュッシー「3度のための」「6度のための」 
4、響きの芸術 ショパン「作品25-1」とドビュッシー「アルペッジョのための」

 という順で、大阪音楽大学大学院の三浦槙子さんによる実際の演奏を交えながら、作品を比較検討していきました。例えば両作曲家の3度の練習曲を比較してみると、同じ3度の連続でも、ショパンの曲は非常に急速なトリルが要求される一方、ドビュッシーの作品はより滑らかなレガートが要求されます。また、ショパンの「作品25−1」とドビュッシー「アルペッジョのための」はどちらも幅の広いアルペッジョの演奏が要求される練習曲ですが、2人の作曲家の和声法、旋律などの違いを比べてみて、「テクニックの向上」という練習曲本来の要素を盛り込みながらも、それぞれに斬新な方法で極めて完成度の高い芸術作品を作り上げていることがよくわかりました。このようにしてみていくと、ドビュッシーの《練習曲集》はショパンの《練習曲集》から影響を受けている一方で、単にショパンの延長線上にある作品なのではなく、それは完全にショパンとは別の世界であるということを強く感じました。

 時代を隔てた2人の作曲家の練習曲を比較するという、大変興味深い内容のレクチャーでした。三浦さんが実際に曲(どれも難易度の高い曲ばかりです!)を演奏して下さったことにより、青柳先生のレクチャーの内容がより一層分かりやすいものになったと思います。これをきっかけに、この2人の作曲家の《練習曲集》を改めて練習してみようと思った方もいらっしゃったのではないでしょうか。

(M.S.)

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