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ショパン・フェスティバル2010in表参道
奈良希愛レクチャーコンサート 開催レポート
2010年5月26日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:日本ショパン協会
共催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
ピアノ:奈良希愛 揚原祥子 チェロ:上森祥平
ショパン・フェスティバル2010。この日は、現在日本とドイツを拠点に世界的に活躍されているピアニスト奈良希愛さんのレクチャーコンサートが開催されました。今回は、現在千葉大学教育学部准教授のピアニスト揚原祥子さんと京都市芸術文化特別奨励者のチェリスト上森祥平さんのお二人をお迎えし、「ショパンを見守った仲間たち-ショパンが彼らに遺したもの- 様々な分野から彼を見つめ直して」というコンセプトで、プログラムは、ショパンと、彼と親交の深かった作曲家たちの作品で構成されていました。 まず今回のコンサートを企画された小林仁先生よりごあいさつがあった後、奈良さんにバトンタッチされ各曲とも奈良さんのレクチャーの後に演奏という流れで進められました。
奈良さんが最初に演奏されたのは、シューマンがショパンを賞賛し彼に献呈したといわれている≪クライスレリアーナOp.16≫。迸るような情熱と物語性に溢れる大曲を、確実なテクニックと高い集中力で見事に演奏されました。
続いて2曲目は、揚原さんと奈良さんのピアノ・デュオによるリストの《メンデルスゾーンの無言歌による大コンツェルト・シュテック》です。この作品は、1834年にパリでリストとショパンにより初演されたそうで、今日でもあまり耳にすることのない珍しい曲です。ハ長調の堂々とした和音から始まり、リストらしい華やかで技巧的な曲想の中に、「甘い思い出」や「狩りの歌」などといったメンデルスゾーンの無言歌の数々が随所にちりばめられ、とても面白く聞き応えのあるものでした。
休憩を挟み後半1曲目は、同じく揚原さんと奈良さんの連弾によるメンデルスゾーンの≪オラトリウム“パウルス“Op.36より序曲≫。この作品は、1835年にショパンがメンデルスゾーンのもとを訪れたとき一緒に演奏されたものたもので、おそらく今回が日本初演であろうとのことです。お二人の息の合った演奏で、メンデルスゾーンらしい優しく温かい旋律が奏でられていました。
最後は、上森さんのチェロと奈良さんのピアノによるショパンの≪チェロソナタOp.65≫です。この作品はショパンの数少ない室内楽曲のひとつで、親友のチェリスト フランショームに献呈され、また、ショパンの生前最後に出版された作品だそうです。お二人の、全身でたっぷりと歌わせていく演奏は、繊細でありながらも、内に秘めた情熱のようなものをひしひしと感じる素晴らしいものでした。
今回のコンサートは、ショパンの自作だけでなく、ショパンを見守った3人の作曲家の、彼が共演などで関わった珍しい作品も聴くことができ、とても貴重なひとときとなりました。
(K.S)
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