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峰村澄子作品展 Vol.8 開催レポート
2010年
12月18日(土) 開場16:30 開演17:00
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ

峰村澄子先生

小林明子(Va)、田代幸弘(Pf)

楊麗貞(Pf-1st.)、堀江真理子(Pf-2nd.)

 12月も半ばを過ぎ、世間は慌ただしい時期を迎えていますが、今回の峰村澄子さんの演奏会では心あたたまる時間を過ごせました。現代音楽はちょっと難しいのでは…と構える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、峰村さんの作品は分かりやすく作られていると同時に、洗練された美を秘めています。聴いている内にその魅力を感じました。

 作品展Vol.8となる今回は、弦楽とピアノのための室内楽編成を中心としたプログラム。《“謡(うたい)”〜ヴィオラとピアノのための〜》から始まりました。もとはクラリネットとピアノのための作品ですが、今回、編成を変えて編曲改訂されました。このヴァージョンではヴィオラという楽器の可能性が最大限に引き出されていました。謡曲の旋律素材そのものを入れ込んでいて、強弱・テンポとも自由に旋律を歌わせています。特にヴィオラのポルタメントによる微分音に奥深さを感じました。押しすぎず、引きすぎず、主張するところは出し、そして美しく去っていく、といった表情に和の心を感じて聴き入りました。

 《わらべうたによるファンタジア〜4手ピアノ連弾のための〜》は今年1月に出版された作品で、4曲の日本のわらべうたをモチーフにしています。各曲は、誰でも知っている遊び歌の旋律が冒頭に示され、そのあと様々な形に変奏されていきます。まりつき数え歌の〈一匁の一助さん〉は、しっかりした拍感にそってダイナミックな終わり方を迎える曲、遊び歌の〈ずいずいずっころばし〉は2人の奏者がやりとりしている内にメロディが変化していくという即興性のあるものでした。どれももとの歌を大事に作られていて、大変愛着が湧きました。

 一見、西洋風のタイトルを持つ《弦楽四重奏曲 第5番》も、日本の伝統音楽にルーツのあるものでした。同じ神楽のテーマが、序・破・急とテンポを速めていくことや、弦楽器がピツィカートの後に左手の指を擦らせることで邦楽器的な響きを演出することは、大変工夫されたアイディアであり、非常に効果的でした。楽器以外にも、たとえば足踏みの音をさせて屋台曳回しの烈しい雰囲気を出していたのは《屋台ばやし〜ヴァイオリンのための〜》で、舞を思わせる静と動を鮮やかに描いて見せた作品でした。

 どの作品も、根底には日本の昔ながらの音楽が流れていて、自然と体に入ってくる音楽でした。このような体が反応する音楽を聴けたのはとても素敵なことだと思います。

(T.)

服部奈々(1st Vn.)、曽根マリ(2nd Vn.)、
小林明子(Va)、松本ゆり子(VC)

カーテンコール(峰村先生とご出演の皆様)

 

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