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KSCO
大西真由子ピアノリサイタル 開催レポート
《桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズVol.11》
2010年11月10日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
大西真由子さんのリサイタルを聴きました。大西さんは桐朋女子高等学校、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースを経て、ドイツのハノーヴァー国立音楽大学を優秀な成績で卒業。日本音楽コンクールなどコンクール入賞歴多数、オーケストラとの共演も重ねられている、実力派ピアニストです。また現在は、上野学園大学で後進の指導にもあたっておられます。会場には、音高・音大生から、クラシック・ファンの年配の方まで、幅広い年齢層のお客様が集まり、ほぼ満席。非常に多彩で興味深いプログラムということもあり、皆さん、大西さんの演奏を心待ちにしておられるようでした。ステージに登場された大西さん。ゆったりとピアノに腰かけ弾き始めたのは、バッハ(ヘス編曲)の《主よ、人の望みの喜びよ》。大西さんのピアノは、確かなテクニックに支えられた端正な演奏が持ち味です。ゆるやかなテンポで、硬質でクリアなピアノの音色を響かせながら音を紡いでいきました。
続く作品は、今年生誕200年のショパンの作品、《バラード》第4番ヘ短調作品52。ショパンの作品のなかでもとりわけ高度なテクニックと歌心、深い精神性が要求される後期の難曲です。大西さん自身、この曲が大好きだそうで、それだけに難しい箇所も弾きこんで曲を自分のものとしていることが伺えました。とりわけ最後の荒れ狂うようなコーダは圧巻でした。
前半の最後は、日本を代表する作曲家・黛敏郎の《オール デ ウーヴル》。氏の学生時代の野心的な作品で、第1楽章は「ブギウギ」、第2楽章は「ルンバ」を中心的なスタイルとして書かれています。筆者もそうですが、おそらく客席の多くの方が初めて聴く演奏だったことでしょう。しかし、これまでの作品とはガラリと変わった、不思議な響きは聴き応えがあり、初めて聴く曲なのにとても楽しめました。様々なスタイルをこなせる大西さんの力量は流石です。
休憩をはさみ後半は、ショパンと同じく今年生誕200年に当たるシューマンの《幻想曲》ハ長調作品17。第1楽章は音の渦ともいえる幻想的な世界が広がり、力強い演奏が繰り広げられていきます。第2楽章はエネルギッシュで楽器をフルに鳴らす豪快な演奏。第3楽章は深い沈黙に沈んだ歌が繰り広げられます。その美しさにお客様は身じろぎひとつせずじっと聴き入っていたようでした。この壮大な大曲を熱演した大西さんに、客席からは盛大な拍手がおくられました。
アンコールに応えて大西さんは、シューマン(リスト編曲)の《献呈》を力強く、情感豊かに演奏、リサイタルを締めくくりました。またの機会に歌心あふれる大西さんのピアノで、色々な作品を聴いてみたいと思いました。
(M.S.)
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