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KMAP
斉藤デュオのピアノ連弾講座シリーズ開催レポート
〜 第3回 「2人で演奏する楽しさ」 〜
2010年10月15日(金) 10:30 講座(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
朝の「パウゼ」で、斉藤デュオによるピアノ連弾講座が開催されました。第3回のテーマは「2人で演奏する楽しさ」。連弾をただ「一緒に演奏する」ということを超え、どうすればアンサンブルの楽しみを感じながらよりよく演奏できるか、ということを中心に実演付きで様々なお話を聞かせてくださいました。教材は連弾作品の定番、ドビュッシーの《小組曲》とラヴェルの《マ・メール・ロワ》です。会場にはスクリーンが設置され、斉藤デュオの演奏する手元がよく見えるようになっていました。舞台に登場された斉藤デュオ。簡単な挨拶の後、《小組曲》から順に曲を見ていきました。いずれの曲も実演の後にレクチャーが続くという形で進められていきました。流石は連弾専門の斉藤デュオ。連弾作品はタイミングを合わせるのが難しい曲も多いですが、呼吸をうまくとって絶妙なハーモニーを聴かせます。例えば《小組曲》の「小舟にて」は美しい高音が実によく響いていた演奏でした。続けてお2人が演奏のポイントを解説してくださったのですが、やはりセカンド(低音)パートはかなり意識的に、ファースト(高音)パートの半分くらいの音量だと思って演奏しているとのこと。自然に聞こえる美しい演奏も、実はセカンドが相当気を使って抑えて実現しているのですね。
また、連弾におけるもう1つの難しさは「重くなりやすい」ということです。共演者に合わせることに気を取られ、どうしても自然な流れを感じられなくなりがちです。この問題を解決するには、「大きく拍を感じる」ことが大事だと斉藤デュオはおっしゃっていました。例えば「小舟にて」は6/8拍子ですが、(3拍子を2つと捉えた)大きな2拍子を感じることが肝心だとのこと。斉藤デュオのデモ演奏は、確かに、2拍子の大らかな流れがよく出ており、曲の情景をよく表現していたと思います。
その他の曲でも、斉藤デュオはテンポ感に関する様々なアドヴァイスしてくださいました。第2曲「行列」では、メトロノームのクリックを裏拍に来るように設定し、軽いリズム感を出す練習を勧めておられました。これはジャズ・ポピュラーのミュージシャンもしばしば採り入れる練習法ですね。また第4曲「バレエ」もポップ・ミュージックの練習でよく行われるように、裏拍を感じることの重要性を説いていました。いずれも方法は異なるとはいえ、軽い、躍動感を出すことにつながる、非常に有効なアドヴァイスですね。クラシック音楽の練習において、「裏拍」を強調した練習というのはあまり行われないので、このあたりのアドヴァイスは、大変興味深く思いました。奏者2人が同じ「リズム」を感じることがいかに重要かということなのでしょう。
《小組曲》のテンポ感の問題はラヴェルの《マ・メール・ロワ》の第1曲「眠れる森の美女のパヴァーヌ」にも出てきます。こちらはテンポが非常に遅い曲なので、どうしても途中で速くなりがちです。斉藤デュオのアドヴァイスは、「16分音符を感じて演奏する」とのことでした。テンポの遅い曲では、より細かい拍を感じつつ、それでいて大きな4拍を感じる。それにより、安定したテンポで、かつ曲の雰囲気を損なうことなく演奏することが容易になります。それぞれの曲には、曲の特徴に合わせた練習法があるのですね。
第2曲「親指小僧」ではまた違った問題が出てきます。それぞれのパートは技術的には特に難しいことはありません。しかし、2人同時に演奏すると手がぶつかり合って意外と弾きにくいものです。ですので、この曲は特に2人で一緒に演奏し、手がぶつからないようによけることを事前に確認しておきたいものです。《マ・メール・ロワ》は一見易しい作品に見えますが、意外と気をつけるべきポイントは多いのですね。その他、指使い、右手と左手をうまく使い分けることなど、連弾特有の様々な問題について分かりやすく指摘して下さいました。
連弾専門のデュオが2人で解説してくださる講座は珍しく、大変興味深かったですし、実演つきで、実際の音を確認しながらレクチャーが進められたのがよかったと思います。多くのピアニストにとって「連弾」は「独奏」に比べ、なじみがない演奏形態かもしれません。しかし、本日のレクチャーでも改めて分かったように、連弾作品は響きの豊かさ、共演者と共に音楽を創り上げる楽しみなど、独奏では到底味わうことのできない魅力的な世界が広がっています。斉藤デュオの楽しそうな演奏、親しみやすいトークにより、このような連弾の素晴らしさを改めて感じることができました。受講者の方もこれを機会に連弾作品を聴き、弾いてみようと思われたことでしょう。
(M.S.)
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