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サウンド・ルート2010-II《日本⇔ロシア》開催レポート
エミール・ギレリスの追憶 〜E.ギレリス 没後25周年記念公演〜
2010年10月3日(日) 14:00開演( 13:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:東京文化会館小ホール
10月3日、東京文化会館にて「サウンド・ルート2010 日本⇔ロシアII エミール・ギレリスの追憶」を聴きました。開場前には、長蛇の列ができていたほどで、この演奏会への注目の高さがうかがえました。演奏に先立ち、このコンサートの企画をなさったピアニストの寺西昭子さんと音楽学者の森田稔さんによるプレトークが行われました。ギレリスの初来日以来、何度も演奏を聴き、彼と個人的に親交もあったという寺西さんは、没後25年に際し、ギレリスの美しく深い音楽を伝えていきたい、とおっしゃっていました。森田さんから、演奏される作品についての簡単な説明もあり、コンサートへの期待がふくらみました。
前半は、ニコライ・メットネルのピアノ作品です。ギレリスと同じモスクワ音楽院出身のメットネルは、日本では聴く機会の少ない作曲家なのではないでしょうか。まずは、モスクワ音楽院に留学経験もある川?智子さんが、《忘れられた調べ 第1集》より〈ソナタ(追憶)イ短調 作品38−1〉と、《ソナタ ト短調 作品22》の2曲を演奏しました。どちらも、短調の美しい音楽を心地よく聴かせてくださいました。メットネルの調性音楽ながら、たゆたうような和声感に包まれ、彼独自の音楽の世界へと誘われました。
続いて、崔仁洙さんによる《ソナタ=バラード 嬰へ長調 作品27》。ギレリスも気に入っていたというこの作品は、非常に技術的にも高度な作品ですが、軽々と弾きこなし、情熱的な演奏が魅力的でした。
後半は、チャイコフスキーのピアノ・トリオ《偉大な芸術家の思い出に イ短調 作品50》という大曲です。演奏は、ヴァイオリンが崔文洙さん、チェロが岩崎洸さん、そしてピアノが崔仁洙さんの三人です。ニコライ・ルビンシテインの思い出に捧げられたこの名作を、息の合った演奏で聴かせていました。悲しみの中にも輝きが感じられる第1楽章、そして各楽器の持ち味を引き出しながら繰り広げられる華麗な変奏曲の第2楽章と、非常に高い集中力と完成度の演奏。会場からは、盛大な拍手がおくられました。
偉大なピアニスト、ギレリスに思いを馳せながら、ロシア音楽の神髄を楽しむことのできた素晴らしい演奏会でした。
(M. K.)
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