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田中あかね ピアノリサイタル 開催レポート
“ボンの町から Vol.3 〜 森ヘ! 〜”
2010年
9月18日(土) 14:00開演( 13:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 9月の残暑のなか、表参道のコンサートサロン パウゼにたくさんの人が集まりました。今回はピアニスト田中あかねさんのリサイタルシリーズの第3回が開催されました。ドイツの「森」をテーマに、4人の作曲家の作品がプログラムに組まれました。

 まず1曲目は、ベートーヴェンのピアノソナタ第15番ニ長調です。使用楽器であるフルコンサートグランドピアノSK-EXを丁寧なタッチで、包容力あふれる表現で演奏しました。第1楽章の冒頭では、低音と高音のゆらぎから奥行きと深みのある音色を演出しました。その場面ではとても穏やかで深い緑の森を思わせます。曲全体の雰囲気はいたって平穏ですが、第4楽章の中間部では、その華奢な体からは想像できないほどに力強くダイナミックな音色を聴かせ、その幅のある表現力に誰もが満足していました。

 2曲目は、シューマンの《森の情景》です。全9曲からなるこの作品は当時の文学作品に霊感を得て完成されました。各曲に〈孤独な花〉〈親しみのある風景〉などのようにタイトルが付けられ、こうしたタイトルと演奏からドイツの森の風景を想像しながら聴いていました。理屈というより感情がほとばしるかのような素早いパッセージはこの曲の特徴で、田中さんの完璧な指さばきによって余すところなく演奏されました。

 休憩後は、特に技術面で難解といわれる2曲の演奏です。リストの《2つの演奏会用練習曲》の〈森のささやき〉では、同じ森の描写とはいえ当然ながら前半の作品それぞれと異なる音楽世界が広がります。リストの作品では、「ささやき」の描写と言われる音型はより細かくきらびやかになっており、より多彩な響きを繰り広げていきます。こうした複雑な箇所ほど、田中さんの手指は美しく素早く動き、その演奏で聴衆を魅了しました。

 最後の曲目はシューベルトの《さすらい人幻想曲》です。とりわけ力強い和音の連打や、躁(そう)と鬱(うつ)が簡単に裏返る旋律的要素において劇的な表現力を発揮し、常に思慮深さを携えて曲全体の構成がなされていました。最後に主題が戻り堂々とした終わりを迎えると、満場の客席から大きな拍手が起こりました。《別れの曲》をアンコール演奏した後、ボンの森についてお話があり、楽しげな日常の一風景を語ってくださいました。ベルリンやフランクフルトの都会もいいけれど、ボンで自然と向き合う暮らしも魅力的だと思いました。

(T.)

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