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久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『続・一歩上を目指すピアノ演奏法』第4回(全5回シリーズ)
「ショパンI」」
2010年10月1日(金) 10:30開演(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 久元祐子先生のピアノ演奏法講座『続・一歩上を目指すピアノ演奏法』も、今回で第4回目になります。今回からのテーマは、今年生誕200年というメモリアル・イヤーの作曲家である「ショパン」です。朝早くから50人を超える受講生で会場はほぼ満席でした。

 今日先生が取り上げられた曲は、ノクターンの中から作品9の2、作品15の2、作品55の1、遺作と、ワルツから作品34の2、作品64の1「子犬のワルツ」、作品69の1「別れ」の計7曲で、非常に盛り沢山の内容でした。

 今日の久元先生のお話のポイントは、「プレイエルというピアノ(ショパンが愛した楽器)特有の音の香り(・・)を、現代のピアノで出す」ということだったと思います。プレイエルという楽器には、音量が出せない、すばやい同音反復ができない、また一定のスピードで音が減衰する現代のピアノに対して、プレイエルでは伸ばした音が曲線を描きながら減衰していくといった特徴があるようです。これだけでも、現代のピアノとは楽器の性能が全く違うことが分かりますし、曲の理解やアプローチの仕方が変わってきますね。

 今日取り上げたノクターンとワルツは一見異なった種類の曲のように思われますが、どちらも上流階級の貴族が出入りしていたサロンで演奏されていたお洒落な曲なのです。お洒落=香り(・・)と考えてよいでしょう。先生のお話から、両者の演奏法には多くの共通点があることが分かりました。1つ目は右手の旋律の歌い方。ショパン自身が生徒に「テノール歌手から多くのことを学びなさい」という言葉を残しているように、右手の旋律は「歌」なのです。歌ってみれば、例えば3度の跳躍より6度の跳躍の方が多くのエネルギーを必要とすることが分かります。つまり、旋律の曲線はエネルギーの量を表しており、それが強弱の微妙な変化につながるのだそうです。

 2つ目は特にノクターンの右手に頻出する、音符数の多い装飾音。音符数が多くなると、ついつい個々の音をはっきりと粒を揃えて弾いてしまいがちですが、それではせっかくの香り(・・)が全く感じられません。まずはハーフ・タッチ(弦がハンマーにあたるぎりぎりのところで弾くこと)を用い、小さな音で弾く、次に装飾音の中でも跳躍や半音を含む箇所には時間をかけ、分散和音は速く通り過ぎるという演奏法を説明してくださいました。先生の実演では、まるで息を吹きかけただけのような、ふわっとした即興的な響きを聞くことができました。

 3つ目は左手の伴奏について。右手の旋律に色合いを加え、感情のひだを表現するのが左手の役割であり、音の持っている意味と強弱をそろえることで説得力のある演奏になります。例えば、不協和音では香りや色を味わい、少し時間をかけることで緊張した響きを強調したり、偽終止では後続の、にかけてdim.したりと、その表現方法は多岐にわたります。また、半音進行では和声の変化が起こりやすいので、特に注意が必要です。

 受講生の方々は楽譜やノートに先生のお言葉を書き留めていたり、また、大きなスクリーンに映し出された先生の手の形や、手の使い方をまねてみたりと、みなさんとても熱心に勉強なさっていました。また講座終了後には、個別に久元先生に質問するといった光景も見られました。

 初めて久元先生のお話を聞かせていただきましたが、実演を交えた講義でとても分かりやすく、よく知っていると思っていた曲にも新たな発見がたくさんありました。次回も「ショパン」ですが、今回とは曲の性格が異なったエチュードとマズルカを取り上げてくださいます。最終回の講義にもぜひ足を運びたいものです。                            

 (A・H)

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