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久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『続・一歩上を目指すピアノ演奏法』第3回(全5回シリーズ)
「シューマンII」」
2010年9月10日(金) 10:30開演(10:30〜12:30)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 分かりやすくかつ内容の濃いレクチャーが大好評の、久元祐子先生によるピアノ演奏法講座『一歩上を目ざす演奏法』。続編も今日で第3回目を迎えます。テーマは前回に引き続き、シューマン。お馴染みの名曲が題材になっていることもあり、楽しみに会場に向かいました。朝早い時間帯ですが、会場には既に多くの受講者が集まって、楽譜を広げながら予習をしています。ピアノの隣にはスクリーンが設置され、久元先生の手の動きが非常によく見えるようになっていました。

 本日久元先生が取り上げた作品は、《アラベスク》ハ長調作品18 、《森の情景》作品82から「孤独な花」「予言の鳥」、《子供の情景》から「見知らぬ国から」「トロイメライ」。曲の分析の前に、シューマンの人生や時代背景、文学との結びつきなどについてもお話して下さいました。

 続いて《アラベスク》から順に、実際に曲を見ていきました。久元先生はまず、シューマンの音楽を理解する上で重要なことの1つとして、「バッハの影響」挙げました。バッハはその後のほとんど全ての作曲家に影響を与えたといってもいいくらい偉大な作曲家ですが、シューマンも「優れた音楽家になりたければ、バッハの平均律クラヴィーア曲集を毎日弾くべきだ」という言葉を残しており、自らもバッハを徹底的に研究しました。その影響は自身の作品に「ポリフォニックな書法」として現れています。楽譜をよく見ると、《アラベスク》は主旋律、低音、そしていくつかの内声部から成っていることが分かります。初心者はよく、ポリフォニックな書法を無視して演奏しがちですが、よく楽譜を見て、「縦の響き」だけではなく「横の流れ」を意識することにより、より立体的な音楽表現が可能になります。

 このことは「孤独な花」でも同じです。この曲で、奏者は右手で2つの声部を弾き分けなくてはなりません。そのことによって、「2輪の花」を表現できるのです。そして、左手は「やわらかな風」をイメージして、手と手首の動きを考えて演奏することにより、シューマンが創り出した世界をより魅力的に表現できることでしょう。このような演奏に際して様々な情景をイメージすることは、文学との結びつきが深いシューマンの音楽においてはとりわけ重要です。久元先生の実演は、各声部ごとのタッチを弾き分けることにより、より魅力的で立体的な音楽の流れを創り出していました。表面的には、シンプルな主旋律の美しさに気をとられ、それほど複雑ではないように感じてしまうこの曲ですが、このように曲の一部分だけを見ても、丁寧に楽譜を読み取れば、実に多くの要求が奏者に課されていることが分かります。

 また、和声の変化を読み取ることも重要です。和声学を本格的に勉強するのはなかなか難しいですが、たとえば長3和音と短3和音の響きの違いを意識するだけでも、演奏は格段に違ってきます。さらに、和音だけではなく、曲全体を見通して、どこで転調するか、を意識することも大事です。例えば「予言の鳥」や「トロイメライ」では、様々な調へ移ろうように転調していきます。久元先生はこのようなシューマンの和声について「万華鏡のごとき和声」とおっしゃっていましたが、これを認識することで、繊細で柔らかな音の移ろいを実現できるのです。

 レクチャー終了後は、受講者の方がそれぞれ久元先生へ質問されていました。本日取り上げた曲は、どれも初級〜中級レヴェルの難易度の、比較的演奏しやすいものばかりでした。しかし、一見シンプルな曲でも、まだまだ改良の余地はあるんだな、と改めて思いました。久元先生のレクチャーは、初回から何回か聞かせていただいておりますが、久元先生の洞察力に富んだお話、素晴らしい実演は本当に勉強になります。この講座も残すところあと2回(2010年10月1日、11月8日)となりました。テーマは「ショパン」。こちらも今から楽しみです。

(M.S.)

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