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KSCO 
荒木琴美&南部麻里 ピアノジョイントリサイタル
2010年
5月9日(日) 15:00(開演)14:30(開場)
主催:カワイ音楽振興会

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

荒木琴美

南部麻里

 5月のすがすがしい日曜日、表参道を歩く人々に負けないくらい、パウゼも大変な活気に盛り上がりました。今回のジョイント・リサイタルは、桐朋学園大学を卒業後、ハンガリーのリスト音楽院に留学なさったお二人による演奏会です。第1部では南部麻里さん、第2部では荒木琴美さんが担当しました。

 南部さんは、3人の作曲家の作品を演奏しました。1曲目は、ドイツの作曲家ベートーヴェンの《創作主題による32の変奏曲》(WoO 80)です。この曲は、8小節からなる自作の主題に変奏を重ね、拡大させていくものです。32通りの変化はさまざまで、流れるパッセージを基調にしていたり、和音をたくさん使っていたりします。南部さんの演奏では、力強い進行が曲の終わりに向かってどんどん増していき、最後のコーダ風変奏は力強く、とても劇的でした。

 2曲目は、バルトークの《15のハンガリー民謡の歌》です。民族色を強く打ち出したこれらの曲は、聴いてすべてのイメージを実感することができました。土のにおい、ダンス、人々の芯の強さなどが、土着の民謡とリズムと一体となって目の前に浮かび上がるような演奏でした。3曲目は、今年生誕200周年のショパンの《英雄ポロネーズ》です。冒頭のせり上がるようなパッセージをはじめ、オクターブによる力強い表現が、大変心に残りました。

 休憩をはさみ、後半は荒木さんの演奏です。曲目は、シューマンのピアノ曲の中でも傑作の呼び声高い《幻想曲 ハ長調》。3つの楽章からなり、ベートーヴェンへのオマージュとして書かれている曲ですが、実際の演奏を聞くと、まったくシューマンらしいというほかないような曲です。第1楽章のソナタ形式はいかにもロマン的に処理されていて、タイトルの通り幻想的な曲です。第2楽章は壮麗な行進曲風。第3楽章はふたたび穏やかな曲調に戻り、最後には静かながらも激しい感情が内側から出てくる曲です。どの楽章も、激しい性格と穏やかな性格がよく表現され、シューマンらしさのよく出たすばらしい演奏でした。この大曲を独特の感性で弾ききった荒木さんの演奏は誰にも真似できないのではないでしょうか。

 最後のアンコールとして、ピアソラの《リベルタンゴ》をお二人の連弾で演奏。妖艶さと激しさを兼ね備えた曲で、生きたリズムが客席を沸かせました。休日の午後にこのような演奏会を聞きに来ることができ、とても充実した気持ちに満たされました。(T.)

 

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