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KSCO
中井正子 パリの香りII 開催レポート
『ラヴェル ピアノ作品全曲レクチャーコンサート・シリーズ』
〜第2回「ソナチネ」「クープランの墓」〜
2010年5月7日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
パウゼで毎回好評の、中井正子さんによるレクチャーコンサートシリーズ。5月7日は、ラヴェルピアノ作品全曲シリーズの第2回が行われ、今回も大勢のお客様が駆けつけました。今回は《ソナチネ》と《クープランの墓》で、ラヴェルの古典主義的な一面が取り上げられました。
演奏会全体は、前半に演奏、後半にレクチャーという形で構成されていました。まずは、フランス音楽を得意とする中井さんならではの、エスプリに満ちた素晴らしい演奏を聴くことができました。《ソナチネ》の第1楽章〈中位の速さで〉の冒頭から聴かれたように、どの曲もフレーズの作り方、とくに間の取り方が絶妙で、音楽に躍動感が生まれていたように思います。また、和声の色彩感とともに、それぞれの声部を弾き分けるテクニックが見事で、そこから生まれる立体的な響きに魅了されました。
後半は、前半の演奏曲目に関するレクチャーでした。会場の前方にはテーブル付きの席もあり、熱心に楽譜に書きこみをしながら聴いている方も多く見られました。中井さんのお話は、曲の構造や特徴的な音についての説明が中心で、特に《ソナチネ》の各楽章を丁寧に分かりやすく分析していくものでした。主題を演奏しながら解説していただくと、本などを読むよりもずっと分かりやすく、演奏のための曲理解に、非常に有益なものだったのではないでしょうか。このような分析に加え、演奏に関するアドヴァイス、特にラヴェルが生きた時代を共有していた人々、そしてその伝統を組む先生方から中井さんが留学中に習ったことをお話してくださったことは、とても興味深かったと思います。たとえば、部分の変わり目で「遅くしない」で淡々と弾くことや、テヌートのついた音をペダルで響かせて手は解放させる、などということは、演奏に大変役立つ指摘でしょう。最後に《クープランの墓》は、組曲として全曲演奏しなくても、各曲を取り出して演奏しても良いとおっしゃっていましたので、これをきっかけにお好きな曲から、演奏に挑戦してみてはいかがでしょうか。
次回は、《水の戯れ》や《亡き女王のためのパヴァーヌ》などが取り上げられるとのこと。ラヴェルの人気のある作品へのアプローチも、見逃せませんね。(M. K.)
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