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KMAP
ミュンヘン国立音楽大学教授
今峰由香 公開講座 開催レポート
2010年
4月2日(金) (10:30 〜)
協賛:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 春の強風が吹き荒れる4月2日、今峰由香先生のピアノ公開講座がパウゼにて開催されました。今峰先生は関西の大学の文学部を卒業後、ミュンヘン音楽大学で学び、シューベルト国際ピアノ・コンクール、エンノ・ポリーノ国際ピアノ・コンクールなど、ヨーロッパの数々のコンクールに上位入賞。そして2002年に32歳にしてミュンヘン音楽大学の教授に就任されました。その気配りの行き届いた理路整然とした語り口や、みずみずしく美しい演奏からは、今峰先生のドイツでのご活躍が目に浮かぶようです。

 冒頭でシューマンの《子供の情景 作品15》の通し演奏がありました。ここでは、聴き手は楽譜を見ないで、音からのイメージをつかむように求められました。続いて、日本とドイツの音楽教育をめぐるレクチャー。幼児教育に関しては、ドイツでは理論を重視するためエチュードが遅れがちで、保護者のバックアップもないので、日本のほうが進んでいるとのことです。ただし、自分の解釈や意見を先生に伝える、という自立した姿勢はドイツのすぐれた点であるようです。また、小さな生徒が親や教師に指示されてコンクールに出る場合の、子供の心に及ぼす弊害についても今峰先生は強調されていました。一方、音大教育に関しては、日本ではリストやラフマニノフなど見映えのする曲が選ばれがちですが、よく考えて楽譜を読み、作曲家の意図を読み取るためには古典ソナタの全楽章に取り組むことが必要である。同時に複数の曲をまんべんなく仕上げるという経験も足りないのではないか、と語っておられました 。

 後半は《子供の情景》の1曲ごとの解釈と模範演奏です。今度は客席の全員が楽譜を見られるように配慮され、スクリーンには楽譜が映し出されました。今峰先生の曲の解釈は、減七の和音(ド♯ミソシ♭など)が“見知らぬ”感じを出していたり、6度の上行がおねだりの熱意であったり、メロディの反復が何回も物語を語る様子であったりというように、音の要素と具体的なイメージがはっきり結びついたものでした。格別に独創的な解釈というわけではなく、シューマンの楽譜をどのように読むかということを教えてくださいました。たとえば、「rit.」と「rit.」が連続する箇所ではその間に「a tempo」を入れなければならない、ペダルの細かい踏み替えは書かれていないがしなければならない等…。また、クララ・シューマン校訂の楽譜とロベルト・シューマンの原典を比較し、曲ごとにご自身がどちらの(あるいは中間の)速度表示を選択するかもご提示くださいました。多くの曲についてクララの校訂版でテンポが遅く指示されているのは、シューマンの作曲期のピアノでは音が早く減衰したという点が関係しているそうです。クララが曲について語った内容もたびたび引用され、「作曲家の意図」をご自身の目で確認されながら丁寧に読み取ろうとなさる真摯な姿が印象的でした。

 質問コーナーでは、〈見知らぬ国と人びとより〉の付点音符を左手の3連符に合わせるか? 〈詩人は語る〉の最後の和音など指の届かない離れた和音をどのように弾くか? という質問が出て、今峰先生はご自身の場合やほかの例を示してくださいました。今回は生誕200年ということでシューマンの作品が題材でしたが、また別の作曲家の作品について、ぜひパウゼで公開講座をしていただく機会を楽しみにしています。

(S.K.)

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