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日本ショパン協会 第249回例会
市村ディットマン朋子ピアノリサイタル開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.6》
2009年9月12日(土) 18:30開演( 18:00開場)
主催:日本ショパン協会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
9月12日、日本ショパン協会第249回例会として、市村ディットマン朋子さんのピアノ・リサイタルが、パウゼにて行われました。市村さんは、桐朋音楽大学を卒業後、ドイツに留学、日本国内のみならず、ドイツをはじめ世界で活躍するピアニストです。今回の演奏会は、「即興曲」がテーマ。形式に縛られることなく、作曲家の自由な音楽性が聴かれる即興曲を、4人の作曲家の作品で聴けるという、とても興味深いプログラムが組まれていました。前半は、シューベルトの≪4つの即興曲≫Op. 142でした。即興曲というジャンルを開拓したシューベルトの、実に美しく深い内面性が表現されていました。第1曲冒頭の下行音型で、深くあたたかい彼女の世界へ引き込まれていきました。また、第3曲のさわやかな演奏も、とても印象的でした。よくコントロールされたペダルによって、旋律もくっきりと歌われていました。
後半の最初は、スクリャービン≪即興曲≫Op. 10-1。独特の和声感を活かし、色彩的な演奏でした。続く、リスト≪即興円舞曲≫は、ワルツのリズムにのせて、優美な旋律が、まさに即興的な自由さで織りなされていました。
最後は、ショパン≪4つの即興曲≫。4曲続けて演奏される機会は、意外と少ないもの。ショパンの即興的な様々な要素を聴くことができました。とりわけ、第1曲や、第4曲の珠玉の旋律の軽やかな美しさ、そして絶妙な陰影が、非常に魅力的に響きました。
満員の会場からは、大きな拍手が送られ、アンコールにショパン≪練習曲≫Op. 25−1とOp. 25−6が演奏されました。それでも鳴りやまない拍手に、もう1曲シューベルト≪楽興の時≫第6番も聴かせてくださいました。このリサイタルの前に亡くなられたシューベルトの好きだった知人に捧げます、とおっしゃっていましたが、その言葉通り、悲しみの中に祈りのような優しい美しさがあり、とても心に染み入るフィナーレでした。
この「即興曲の夕べ」は、4人の作曲家の即興的なインスピレーションを感じるとともに、市村さんの自由で自然な音楽性を聴くことのできた、素晴らしい一夜となりました。(M.)
終演後のロビーの様子。
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