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7月3日、津田ホールにてクロイツァー賞受賞者による演奏会が開催されました。クロイツァー賞とは、東京芸術大学、国立音楽大学、武蔵野音楽大学のそれぞれの大学院を優秀な成績で修了した人に与えられる賞です。当日配られたプログラムには、これまでの受賞者名が全て掲載されていましたが、今日第一線で活躍する名前も数多く見受けられ、この賞の重みを感じました。この名誉ある賞を今年受賞した3人は、どのような演奏を聴かせてくれるのか、期待を胸に足を運びました。
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一人目は、武蔵野音楽大学の中西明日香さん。ピアノの前に座り、ぐっと集中力を高めた後に弾き始められた音は、シューベルトの音楽の持つ深みを十分に伝えるものでした。2曲目に、プロコフィエフの「戦争ソナタ」と呼ばれる《ソナタ第6番》を演奏されました。特に第1楽章や第4楽章での、プロコフィエフらしいリズムが、しなやかな腕の使い方から、活き活きと生み出されていました。
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続いて、国立音楽大学の中谷友美さんが、シューマン《幻想曲》を演奏しました。全体として、のびのある澄んだ音色が魅力的だと思いました。シューマンの最高傑作とも言える大作ですが、全曲を貫く2つのモティーフを印象的に聴かせ、それぞれのパッセージを美しく歌いながらも、全体の構成感もしっかりとある演奏でした。
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そして、最後を飾ったのは、東京芸術大学の長瀬賢弘さんで、プロコフィエフの作品を2つ、《4つの小品 作品3》と《ソナタ第8番》を演奏しました。叙情性と力強さが、絶妙なバランスを保っていたと言えるでしょう。確実なテクニックと細部まで考え抜かれた表現力は、実に素晴らしかったです。とりわけ第3楽章のコーダの盛り上がりでの、聴く者を惹きつけて放さない力強い促進力は、まさに脱帽といったところでした。
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それぞれ個性的な演奏で聴衆を魅了した3人の若きピアニストたち。これまでの受賞者たちにつづいて、これからもますます活躍されるよう、応援していきたいと思います。 (M.)