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岡田敦子トーク&ピアノ・シリーズ Vol.1開催レポート
「 弾く人、楽しんで弾く人のために、とびきり実践的なトーク&ピアノ」
2009年6月12日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 今回のコンサートは、岡田敦子先生の「弾く人、楽しんで聴く人のために、とびきり実践的なトーク&ピアノ」という魅力的なシリーズです。その第1回『プログラミングのために』は、「ピアノ音楽の1912年」というコンセプトで曲目が組まれています。

 群青色(ぐんじょういろ)のドレスで現れた岡田先生は、まずスクリャービンの初期作品を2曲演奏されました。この2曲は練習曲(作品2−1)と詩曲(作品32−1)で、1912年以前に作曲され、まだ調性感の残るロマンティックな雰囲気の曲でした。この後に演奏される曲目と比較すると、1912年という年が浮き彫りになります。

 2曲を弾き終えたところで岡田先生はマイクをとり、今回のコンサートのコンセプトについてお話されました。まず、現在の多様化するコンサートのあり方についてお話され、演奏家は何を、どのように演奏すればよいか問題提起されました。そして、その答えの一つの例として岡田先生が今回決めたテーマについて、1912年という年は、すでに起こっていた調性崩壊を経て、ピアノ音楽史に残る多くの作品が生まれた年だと説明なさいました。

 この後演奏されるのは1912年前後に作曲された作品です。どの曲にも、いわゆる調性音楽とは異なる世界があり、独特の魅力をかもし出しています。スクリャービンの《2つの詩曲》(作品63)や《2つの舞曲》(作品73)は、曲ごとに〈見知らぬもの〉〈花飾り〉といったタイトルが付けられていますが、とても無機質で、鏡の向こうの暗い世界を垣間見るような静謐(せいひつ)な音楽でした。プロコフィエフのソナタ第2番(作品14)はニ短調の曲ですが、調性が崩壊していく様子が印象的で、プロコフィエフらしいシニカルな音楽に改めて衝撃を受けました。

 休憩後、再び岡田先生のお話がありました。ヤナーチェクの同時代の作家のある評論が、この時代の精神性を理解する鍵になったとのこと。それは「霧のなかを歩む」と言ったときの「霧」は「闇ではない」ということです。実際、ヤナーチェクの《霧の中で》の演奏は、自分の周りはよく見えるが、数メートル先は見通せないという状況がよく感じられるものでした。最後のスクリャービンのソナタ《白ミサ》(作品64)の演奏は、岡田先生が画家のカンディンスキーの言葉を引用されたこともあって、「和音自体に色があって、何かを語る」ように、たくさんの和音が「色」となって聴き手に語りかけてきました。

 

 会場には多くのお弟子さん方がいらして、素敵な演奏を聴けたと同時に勉強になったのではないでしょうか。学識ある演奏家、岡田先生の今後のトーク&ピアノシリーズにも是非足を運びたいものです。

(T.)

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