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日本ショパン協会 第246回例会
菊地裕介ピアノリサイタル開催レポート
2009年4月23日(木) 19:00開演( 18:30開場)
主催:日本ショパン協会
会場:東京文化会館小ホール
本日のリサイタルは、日本ショパン協会第246回例会として、東京文化会館小ホールで開催されました。リサイタルに先立って、2008年日本ショパン協会賞受賞式が執り行われました。昨年を通じてショパンを演奏した演奏家の中から、最も高く評価された前田拓郎さんにブロンズのメダルが授与されました。前田さんは、ご自身のショパンへの情熱と、今後のショパン演奏への展望を清々しくスピーチされました。今晩の主役、菊地裕介さんは、海外の多くのコンクールで受賞し、また演奏活動にとどまらず編曲も手がけている気鋭のピアニストです。本日のプログラムは、どれもメイン・ディッシュ。まずはJ. S. バッハの《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調》(ピアノ独奏用に編曲したもの)です。第1曲から第4曲までは菊地さんご自身による編曲、第5曲はブゾーニ(1866-1924、イタリア生まれのドイツの作曲家、ピアニスト)による編曲で構成されています。バロック的な対位法に忠実な書法を守って書かれた第1曲に始まり(アルマンド)、曲が進むに従って音の軽やかさや色彩感を増していき(クーラント、サラバンド、ジーグ)、最後にはブゾーニのダイナミックでロマン的とも言える第5曲で締めくくられます(シャコンヌ)。第1曲から第4曲までの菊地さんによる編曲は知的で、過度の誇張がなく、菊地さんらしいバッハへのオマージュの一つの形であると感じました。それはブゾーニの第6曲へと自然な形で流れていき、全体で一つのパルティータとなって、ピアノの上で実現されたのです。原作者バッハも大いに喜んだに違いありません!
二つ目のプログラムは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ《熱情》。古典中の古典のレパートリーですが、菊地さんの手にかかると、目を疑うほど速く動く指のテクニックや、音楽表現のめまぐるしい変化と豊かさを見せ付けます。よく反響し、天井の高いこのホールのステージ上で、この素晴らしい名手が演奏する様子に、聴衆はみな、釘付けでした。
最後のプログラム、これも目玉と言えましょう。ショパンの《24の前奏曲》です。24の異なる調で書かれたこの曲集の演奏からも、菊地さんの魅力が充分に伝わってきました。テクニックはもちろん完璧で、次々と奏でられる24の豊かなイメージに、聴衆は心地よく身を任せていました。
アンコールとして、ドビュッシー《月の光》、リスト《B-A-C-Hの主題に基づく幻想曲とフーガ》、バッハ《主よ、人の望みの喜びよ》(ピアノ編曲版)の3曲を演奏。バッハにこだわった選曲で聴衆を魅了しました。終演後のサイン会にはあっという間に長蛇の列が出来ていました!これからも魅力あふれる菊地さんの演奏を楽しみにしています。
(T.)
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