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KSCO
伊藤わか奈 ピアノリサイタル開催レポート
“オール・ベートーヴェン・プログラム”〜ベートーヴェンの軌跡を辿る〜
2009年4月10日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
伊藤わか奈さんは東京芸大卒業後、ベルリン芸術大学留学を経て、現在、東京芸大大学院で研鑽を積んでおられます。日本音楽コンクール他、数々のコンクールで非常に優秀な成績を修めており、今後の活躍が期待される若手ピアニストです。今回のコンサートはオール・ベートーヴェン・プログラム。初期から後期まで、ベートーヴェンの創作活動のほぼ全時期をカバーする充実した作品が並んでいます。ピアニストにとっていわば「直球勝負」といえるベートーヴェン・プログラム。どんな演奏を聴かせてくださるのか、楽しみに開演を待ちました。最初の曲は《ピアノ・ソナタ》第6番ヘ長調作品10−2。初期の作品です。第1楽章の軽やかでよく響くタッチ、第2楽章の不気味さと美しさが同居した世界の表現、第3楽章の複声部の明確な弾き分けなど、どの楽章も伊藤さんの高い技術と表現力が光る演奏でした。
続いては《ピアノ・ソナタ》第17番ニ短調作品31−2「テンペスト」。硬軟使い分けた音色の多彩さが大変印象的でした。冒頭の幻想的なアルペジオから会場の空気をガラリと変えてしまう伊藤さんの表現はさすがです。
休憩をはさみ、後半は《幻想曲》作品77で始まりました。次々と新しいテーマが現れ、転調を繰り返すこの作品は、ベートーヴェンの作品のなかでは一風変わったものであり、演奏される機会が比較的少ない曲です。伊藤さんの演奏は優れたテクニックを駆使しながらも、明確な強弱の対比などによりこの曲のもつ即興性を余すところなく表現し、聴き手の意表をつくこの曲の魅力を引き出したものでした。
そして最後は《エロイカ変奏曲》作品35。腕に自信のあるピアニストが好んで演奏する演奏困難な大曲です。伊藤さんの壮大で力強い表現は圧倒的なもので、囁くようなピアニッシモから朗々と響き渡るフォルティッシモまで存分に表現した、大変聴き応えある演奏でした。素晴らしい演奏を繰り広げた伊藤さんに、会場からは「ブラヴォー!」の声援と熱い拍手がおくられました。
演奏後のトークは趣味の星占い、留学体験、演奏曲目の解説など広範囲に及び、どれも楽しいものでした。伊藤さん、演奏だけでなく、トークもかなり達者です!
アンコールには有名な《悲愴ソナタ》の第2楽章を演奏。極めて美しい旋律に会場にいた誰もが聴き入っていたことでしょう。
伊藤さんのベートーヴェンへの熱い想いがひしひしと伝わってくる大変内容の濃いコンサートでした。是非、またパウゼで演奏していただきたいですね!
(M.S.)
ロビーの様子。恩師の笠間春子先生と。
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