| |||||||
|
|
KSCO
佐藤圭奈 ピアノリサイタル開催レポート
2009年3月17日(火) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
春の訪れを感じる暖かな1日に、佐藤圭奈さんのピアノリサイタルが行われました。佐藤さんは、数々のコンクール受賞歴をお持ちで、昨年のピティナ・ピアノコンペティションでの特級グランプリは、記憶に新しいところでしょう。注目の若手ピアニストが、パウゼでどのような演奏を聴かせてくれるのか、期待を胸に足を運びました。真っ赤なドレスで登場した佐藤さんが、まず演奏されたのが、モーツァルトの《ピアノ・ソナタ 第18番 二長調 K. 576》です。モーツァルトの作品としては、かなり対位法的な書法で書かれたこの作品。それぞれの声部を際立たせ、すっきりとしたストレートな表現が印象的でした。
続いて、リストの《巡礼の年第2年「イタリア」》より、第4・5・7曲の3曲が演奏されました。中でも圧巻だったのは、やはり〈第7曲 ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲―〉でしょう。冒頭の「増4度」という、昔から悪魔の音程と呼ばれてきた不気味な音程でのオクターヴ下行。不安や恐怖に満ちた雰囲気で、会場中を包み込みました。爽快に駆け巡るパッセージ、響き渡る豊かな音量、そして時折現れる穏やかな旋律の美しい表現など、素晴らしいテクニックと表現力が聴かれた作品でした。
休憩後、素敵な白と黒のドレスに衣装替えし、その雰囲気にぴったりのシャリーノ《夜に》を聴かせてくれました。シャリーノは、イタリアの現代の作曲家ですが、全く「難解な」印象は与えません。高音での細かいパッセージは、佐藤さんの透明感のある音色とも相まって、キラキラと輝く夜空の星のように感じられました。
そして最後は、プロコフィエフの《ソナタ第6番 イ長調 Op. 82「戦争ソナタ」》です。プロコフィエフの作品の、名曲であり難曲でもあります。第1楽章冒頭の強烈な第1主題から、躍動感のあるリズムで進め、ぐいぐいと聴衆を惹き付けていきました。力強く、そして良くコントロールされた表現は、プロコフィエフの世界、とりわけこの作品に込められた「戦争」の厳しい実情や平和への願いを十分に伝えるものであったと思います。第4楽章でのクライマックスは、本当に圧倒的で、このコンサートを見事に締めくくりました。この熱演に、会場からは大きな拍手が贈られました。
アンコールは、ショパンの《前奏曲 イ長調 Op. 28−17》。非常に美しく、そして穏やかに演奏されました。大勢集まった聴衆は、大満足で家路につくことができたことでしょう。
終演後のロビーの様子。恩師の先生方やご友人方と。
|