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KSCO
川崎智子 ピアノリサイタル
2009年2月18日(水)19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
川崎智子さんは桐朋学園大学ピアノ科及びモスクワ音楽院を優秀な成績で卒業された後、リサイタル、室内楽、コンチェルトなど多方面に活躍されています。2月18日の夜、「パウゼ」でのリサイタルを聴きました。今回のプログラムは、シューマン、リャードフ、スクリャービンというもの。ロシアに留学されていた川崎さんならではの興味深い組み合わせです。
白の素敵なドレスで登場した川崎さん。シューマンの《アラベスク》作品18を弾き始めます。時に優しく、時に力強く歌い上げる豊かな表現力は実に見事なものです。ピアニッシモのささやくような表現はとりわけ印象的でした。この作品は様々なピアニストが演奏する名曲ですが、今回の川崎さんの演奏もまた、数々の名ピアニストに肩を並べるものだったといえるでしょう。
続いてのシューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化芝居「幻想的情景」》作品26では、より高度な表現が際立ちました。例えば、第1楽章「アレグロ」では高度なテクニックを駆使し、豪快でリズミカルな表現をする一方、第2楽章「ロマンツェ」では繊細なタッチで多彩な音色による表現を繰り広げていきました。各楽章の性格を巧みに表現した、スケールの大きな演奏でした。
後半は赤紫のドレスに変わって登場。ロシアの作曲家、リャードフの作品から始まりました。リャードフの作品はそれほど頻繁に演奏されるわけではなく、演奏会で聴ける機会も非常に限られています。そのようなわけで今回の川崎さんの演奏は、隠れた名曲を紹介するという意味合いもあり、作品への熱い想いが感じられました。
まずは《前奏曲》作品57−1、40−2、39−4。ショパン風の旋律を美しく弾いたのが印象的でした。続く《舟歌》作品44は、華麗な旋律を丁寧に表現。《ポーランドの民謡の主題による変奏曲》作品51では素朴な民謡の主題を表情豊かに歌い上げていきました。ショパンからの影響を感じさせる旋律及び和声と、ロシア音楽の独特な味わいが合わさった作品の魅力を存分に引き出した演奏だったと思います。
プログラム最後の曲はロシアの作曲家・スクリャービンの《幻想曲》作品28です。作曲者自身がピアニストだったこともあり、スクリャービンの作品の多くは高度なテクニックを要求します。この作品もやはり非常に難しい作品の一つとされています。川崎さんの演奏は、高度なテクニックを駆使しながら神秘的な音の世界を実現する魅力的なもので、スクリャービンの世界を鮮やかに描き出すものだったといえるでしょう。
満員の客席からのアンコールに応え、最後にショパンの《ノクターン》作品9−2とプロコフィエフの《10の小品よりプレリュード》を演奏。心地よい響きで演奏会を締めくくりました。
フォルティッシモの力強い表現からピアニッシモの極限の美しさまでを存分に描き出す川崎さんのピアノを堪能できた素晴らしい演奏会でした。是非また川崎さんの演奏を聴いてみたいと思います。
ロビーの様子。
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