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KSCO
安田麻佑子&ロマン・デシャルムリサイタル開催レポート
〜パリの薫りただよう珠玉のフランス作品からブロードウェイミュージカルまで〜
《東京藝術大学卒業生 新進演奏家シリーズ Vol.4》
2008年10月24日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
《東京藝術大学卒業生 新進演奏家シリーズVol. 4》、今回の出演者は、ソプラノの安田麻佑子さん、そしてピアノのロマン・デシャルムさんです。お二人とも、パリを中心としてご活躍されている、若手演奏家です。
会場へ足を踏み入れると、いつもより暗めの照明。落ち着いた雰囲気の中、真っ白なドレスに身を包んだ安田さんが登場しました。まずは、ドビュッシーの歌曲を4曲。1曲目の「ピエロ」から、安田さんの素晴らしい歌声、そしてフランス的な“エスプリ”が会場中を満たしていました。何と言っても彼女の魅力は、軽やかで透き通った声でしょう。そして、高音まで難なく出してしまう、音域の広さにも驚かされてしまいました。続いては、ピアノのソロで、同じくドビュッシーの《12の練習曲》より第10番「対位法の響きのためのエチュード」です。練習曲といっても、これは指の練習というメカニカルなものではなく、非常に叙情的な作品。それを良くコントロールされたタッチで、絶妙な響きと深い表現で聴かせてくださいました。この他、ラヴェルの《古風なメヌエット》も、シャブリエの《10の絵画風小品》より第4曲「木陰で」も、歌の流れを途切れさせないプログラミングでソロが挿入され、彼が優れた共演者であり、かつソリストであることが、よくわかりました。
そして、もう1つの彼女の魅力は、演技力でしょう。前半最後のオッフェンバック《ホフマン物語》より「森の小鳥は憧れを歌う」というアリアは、まさにその1場面が繰り広げられたという感じでした。機械仕掛けの人形オリンピアの、コミカルな動き、とくに安田さんがパタンと上半身をたおし、デシャルムさんがクルクルぜんまいを巻くと、そこから起き上がる、という演出には会場から笑いがおこっていました。
休憩の後は、真っ赤なドレスに衣装替えして登場。2曲続いたバーンスタインのナンバーも、実に魅力的に“演じて”いました。《キャンディード》の「着飾ってきらびやかに」は、涙を誘うような悲しみと、宝石を喜ぶ楽観的な部分との対比が、見事でした。クライマックス、トマの《ハムレット》からのアリア「遊びの仲間に入れてください」では、高音の輝きばかりでなく、真に迫る表現力で、締めくくりました。
盛大な拍手に応え、アンコールは《きらきら星変奏曲》。お二人とも、ユーモアたっぷりに聴かせてくださいました。フランスの気分を満喫し、耳だけでなく目でも楽しめたコンサートだったと言えるでしょう。安田さんは、現在パリに在住とのことですが、また日本で演奏を聴けるのを楽しみにしています!
終演後の様子。
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