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田中あかね ピアノリサイタル開催レポート
2008年10月14日(火) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 秋の雨がしとやかに降るなか、表参道のパウゼにはピアノリサイタルを聞きにきた人たちでにぎわっていました。本日のリサイタルでは、東京藝術大学を卒業し、十数年間ドイツで演奏の研鑽を積んだ田中あかねさんが、ドイツものを中心に演奏されました。

 まず第1曲目はスカルラッティで幕をあけます(K. 87, K. 159)。スカルラッティのソナタはチェンバロのために書かれましたが、現代のピアノで弾かれると、チェンバロにはない演奏の可能性に改めて目を見はります。強弱や音の残響、デュナーミクや音の長さといった特徴をピアノならではの細かなニュアンスとして余すところなく表現されました。

 前半の本領となるのはシューベルトの4つの即興曲(D. 899)。1番(ハ短調)では、冒頭の深く響く和音のあとに続く寂しげな単旋律が非常に味わい深いものでした。時折でてくる同音連打はショパンの雨だれを連想させるような憂愁をたたえていました。有名な2番(変ホ長調)はため息がでるほどの素晴らしい演奏。流れる3連符のパッセージを一音一音確実に、流麗に弾ききりました。調やちょっとした和声の変化に音楽も色が変わります。最後の劇的なアッチェレランド(「加速して」)に私たちは拍手を我慢できなかったほどです!3番(変ト長調)はフラット系の温かみのある曲。左の低音には深みのなかに底知れぬ安心感のようなものが漂っています。旋律の歌い方にはストーリー性があって、いつまでも浸っていたい余韻に包まれました。4番(変イ長調)では右手のきらきらとしたパッセージが本当に輝いて聞こえました。シューベルト特有のワルツのリズムも楽しく表現されていました。

 後半は武満の《雨の樹素描》で始まります。月明かりの下、雨に降られた樹の根元にはいくつもの水たまりができている・・・雨水のしたたる樹の像は知的に構築され、輪郭のはっきりした線によって私たちに見せてくれました。

 最後にシューマンの謝肉祭(Op. 9)。カーニヴァルというのは仮装行列のお祭りだということで、この曲もいろいろ個性豊かな登場人物によって彩られています。それでも全体にまとまりを与えるのはイ、変ホ、ハ、ロの4つの音。これらの音の組み合わせによるモチーフはどの曲にも必ず入っています。〈前口上〉では堂々として祝祭の楽しい雰囲気が伝わってきました。〈スフィンクス〉では田中さんは独自に、最初の二つは1オクターヴ上げて、3番は2オクターヴほど下げた低音で歌いました。なるほど、説得力があります。最後の〈行進曲〉は軽すぎになりがちなパッセージも強くしなやかに荘厳に弾かれました。コーダは大変華やかで、終わった瞬間、会場にはどよめきが生まれました。

 まだ帰りたくない私たちのために演奏してくださったのはシューベルトの《楽興の時》より3番(ヘ短調)とシューマンの《森の情景》 より〈予言の鳥〉。前者はその舞曲風の楽しさ、後者は神秘的な世界をみせてくださり、素敵なリサイタルの夜は終わりました。これからももっと田中さんの演奏をききたいものです。

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