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KSCO
米津真浩ピアノリサイタル開催レポート
《2007年 日本音楽コンクール入賞者シリーズ Vol.3 》
2008年
9月17日(水) 19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 第76回日本音楽コンクール入賞者シリーズとして、本日は米津真浩さんのサロン・コンサートが表参道で開かれました。その実力による演奏をこんなにファミリアーな空間で聴くことができるのは、とてもうれしいことです。

 聴衆は学生くらいの年代の方々が多く、会場は開演前から期待と熱っぽい空気に包まれていました。溌溂(はつらつ)とした表情で登場した米津さん。1曲目はJ. S. バッハのトッカータ ハ短調 BWV 911です。初めの部分は即興風ですが、走句の終わりに単音(もしくは和音)の時間をたっぷりかけた引き伸ばしが印象的でした。これはバッハに限らず今回の演奏の中で非常に際立った特徴です。音響的に最も調和のとれた鳴り響きがピアノ全体から解き放たれたとき、音は時空を超え、聴き手は純化された音だけの境地に立たされるのです。フーガ部分のやや現実的な音楽世界との対照が鮮やかに描かれました。

 2曲目はショパンのバラード第4番ヘ短調。有名な曲ですが、ここでも米津さん独特の解釈が光ります。あの陰鬱な旋律は、どこでも聞いたことがない音の彩と波紋となって現れました。曲想の変わる箇所では、ペダルをうまく使って美しく響きわたる音を味わっておいででした。一曲の悲しい物語は、悲しすぎるほどに訴えかけてきました。最後の急速なコーダで力果てたのか、弾き終えた米津さんは憔悴しきったかのようでした。

 3曲目には19世紀ロマン派を体現する《死の舞踏》を演奏されました。この曲は交響詩としてサン=サーンスにより作曲された後、リストがピアノ独奏用に編曲したもので、今回はホロヴィッツ演奏版を使用。端から端までの鍵盤を縦横無尽に駆け巡り、時には腕が交差して、その超絶技巧には感服するほかありません。

 休憩を挟み、最後のプログラムはシューマンの《謝肉祭》です。次々と変化する20の小さな風景は切れ目なく演奏されました。A、Es、C、Hの各音による作曲の連続性を保ちながらもワルツなどの楽しい雰囲気を味わえたのは、何よりも米津さんが弾くことを心から楽しんでいるからなのでしょうね。

 感動の嵐が拍手喝采となって会場に巻き起こると、米津さんはアンコールに応えてくださいました。1曲目のスクリャービン《12の練習曲》より第12番では確かな技術を披露されました。2曲目はシューマンの「トロイメライ」。ヘ長調の主和音を、これほど美しい永遠の響きに感じたのは初めてです。その響きに涙を浮かべた人もいたほどでした。

素晴らしい心にしみる演奏有難うございました。

 

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