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クロイツァー記念会 第32回例会
クロイツァー賞受賞者による演奏会開催レポート
川崎翔子(東京芸大) 堀江明子(国立音大) 井上 茜(武蔵野音大)
2008年7月4日(金) 19:00開演
会場:津田ホール

梅雨明けを前に真夏日となった今日、日中の暑さの夕涼みに心地よい頃、津田塾大学構内の津田ホールで行われる演奏会を聴きに出かけました。日本の音楽教育を熱心にはぐくまれた20世紀前半の名だたる音楽家、レオニード・クロイツァーを記念する賞を受けたお三方による演奏会です。今回で第38回を数えるこの伝統的な賞を受けることは演奏家にとっての新たなスタートにもなることでしょう。

東京芸大からは川崎翔子さんで、フランス人作曲家による選曲です。前半にドビュッシーの小さな曲をいくつかおき、後半はメシアンのリズミックなエチュードを披露されました。川崎さんの演奏は、おそらく目を閉じて聴いていたら非常にもったいないものです。つまり、指先とピアノの関係ではなく、一人の人間と一台のピアノ、そしてその相乗効果によって生成されるステージ上のどよめきといったものが、耳からはもちろんのこと、視覚的にも伝わってきたのです。演奏という行為は体という制限から逃れることはできないのですが、彼女は指だけでなく腕、そして肩まで自由に羽ばたかせることで本当に幻想的なドビュッシーの音世界を表現していました。それが体の原理を熟知した上での、ご自身がピアノを弾くのに最も効果的な体の使い方であると納得せざるを得ませんでした。

国立音大を卒業された堀江明子さんは、スクリャービンの前奏曲と幻想曲を演奏されました。スクリャービン独特の和声と、おだやかでメランコリックな雰囲気を自由に表現されていました。また注意深く漸次的なデュナーミク(強弱法)によるデリケートな表現は、詩、光、色などと音楽の関係を論じたスクリャービンらしい含蓄の豊かな響きがしていました。

武蔵野音大でオーケストラとの共演を多くこなされたという井上茜さんはベートーヴェンの《ハンマークラヴィーア》を弾かれました。楽曲の特徴、連続的な打鍵音が非常に効果的に表現されていて、標題を余すところなく味わい深く聞くことができました。第3楽章の長いアダージオでは、独特の雰囲気によって豊かな音楽的時間をかもし出しておいででした。 今回のお三方によるプログラミングは共通して「打鍵」ということを強く印象付けられたように思います。「打つ」という動きから生み出される音の広がり、個性豊かな世界観を充分に味わうことのできた夜でした。

 今回ご出演された川崎翔子さん、井上 茜さん、堀江明子さん。

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