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サウンド・ルート2008-I《東京⇔ウクライナ》 レポート
日本・ロシア音楽家協会、レクチャーコンサート
2008年
5月26日(月) 19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ


リハーサル

主催の日本・ロシア音楽家協会はソ連崩壊後もかつてソ連に含まれた国々と交流を保ち、今年はウクライナの作曲家を招聘しました。リヒテル、ホロヴィッツをはじめウクライナからは名だたる演奏家が生まれ、彼らの演奏は音源で入手できますが、現在生きて活動を続けるウクライナの作曲家の演奏や話をじかに聞くことのできる機会は非常に稀です。

 

 

 この日のステージには、2名のウクライナの作曲家スコリク氏、ピリュティコフ氏、ピアニスト兼通訳の濱野氏、日本・ロシア音楽家協会の石田氏、作曲家の堀越氏、田中氏(司会)がパネリストとして席を並べ、日本語とロシア語を使ってレクチャーがおこなわれました。進行順に、石田氏によるウクライナ音楽の解説、ピリュティコフ氏による民俗音楽の解説とCD(男声2パートと伴奏の早い2拍子系の舞踊曲)、スコリク氏のピアノ曲自演(トッカータ)、濱田氏のカラマーノフの解説とそのピアノ曲演奏(ピアノ・ソナタ第1番、ピアノのための音楽 第1番)。休憩を挟んで後半はピリュティコフ氏による1960年代以降のウクライナ音楽の解説とシルヴェストロフ(交響曲第5番)、ピリュティコフ氏(クラリネット、チェロ、ピアノのためのトリオ)の作品のCD、そしてパネリストたちの挨拶と質問タイム。短時間にたくさんの要素が散りばめられた彩り豊かな内容でした。CDはステージ右のスクリーンの前に置かれたパソコンを使って流されました(なお、CDは後で協会にプレゼントされました)。

 スコリク氏(1938-)がピアノを弾く姿は独特でした。彼は1960年代にモスクワ音楽院で学び、現代音楽の技法と民俗音楽の色調の融合が彼の作風と言われています。一方で、音楽理論の著作も発表しています。モスクワ音楽院ではシニトケ、グバイドゥーリナ、カラマーノフらとともに学び、特に後者2人とは親しかったそうです。この日のピアノ曲自演では、過剰な速度変化や感情変化を見せずに飄々と、骨太に、プロコフィエフよりもさらに辛辣さのきいたトッカータを弾いてくれました。

カラマーノフ(1934-2007)のピアノ曲については、この日、切実な演奏を聞くことができました。カラマーノフは特に1965年以降、ソ連では禁じられていたキリスト教への強い信仰心を音楽で表明したそうです。しかし今回の2曲はそれ以前の作品です。叙情的な主要主題と分散和音の伴奏が特徴的なロマンティックな1曲目、打って変わって、音列の技法を採用した2曲目。濱野氏(東京芸大学部1年)による主題旋律の明白な演奏や、力強く輝かしい和音の響きは曲にふさわしいものであったと思います。先ほどのトッカータとともに、はっきりした曲想の区切りや同音反復が耳に残りました。 

後半はピリュティコフ氏(1965- )のレクチャー。ソ連では1950年代から西側の新しい技法が幅広く入ってきて、1960年代のモスクワには、ウクライナ出身の作曲家たちによる前衛音楽のグループがありました。その後、スペクトル音楽や即興音楽などさまざまな傾向がとり入れられたと言います。「メタ言語」という概念で説明されたシルヴェストロフ(1937- )の作品と、単純さの音楽の例となるピリュティコフ氏の作品を聞きました。

言語や宗教的に難しい立場にあると想像されますが、一見とてもクールで穏やかな作曲家たちに親しみを感じたコンサートでした。

 

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