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後藤育慧 ピアノリサイタル開催レポート
〜シューマン・アーベント 美しい5月に〜
2008年5月月11日(日) 17:00開演( 16:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

後藤育慧さんは昭和音大で教鞭をとるかたわら、ソロや室内楽など、幅広く活動されているピアニストです。今日は、オール・シューマン・プログラム。シューマンが恋人・クララへの熱い想いを寄せるなか作曲した小品集で、どれもシューマンの最高傑作に数えられているものばかりです。

年配の方や音大生など、多くの方々が集まり、会場はほぼ満席でした。さて、最初の《子供の情景》作品15で後藤さんは、深みのある音色で、この曲の素朴で純粋な世界を美しく表現されました。特に「見知らぬ国から」「トロイメライ」「眠る子供」などの曲での叙情性が光っていたように思います。続く《クラースレリアーナ》作品16は高度な技巧を駆使しながら、ダイナミックな演奏をされました。

休憩時間にワインやジュースでくつろいだ後、後半のプログラムはテノールの川野名康夫さんとの共演で《詩人の恋》作品48です。川野名さんの美しい歌声が朗々と会場に響き渡る中、後藤さんのピアノも歌と呼吸を合わせて軽やかに歌います。両者の息がピッタリ合い、バランスもよく、見事な演奏を繰り広げました。

 

アンコールには《ミルテの花》作品25から「蓮の花」と「献呈」を披露。シューマンがクララとの結婚前夜に捧げた曲集ですね。川野名さんが歌詞の内容を朗読した後、愛の歌を情熱的に歌い上げる演奏でした。

シューマンとクララの恋も紆余曲折を経てついに実り、結婚まで辿り着きました。その間、今回のプログラムのような多くの名作が生み出されたわけです。そのようなシューマンのクララへの思慕のなか生み出された作品をたどり、最後には結婚前夜に捧げられた愛の歌「献呈」で締めくくるというプログラム全体の構成も、面白かったです。その意味ではシューマンのクララへの「愛」がキーワードといえる今回のコンサート。ピアノと歌を通してシューマンの愛の世界をたっぷりと楽しませていただきました。

 終演後、ロビーの様子。

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