CD番号 ZMM0412 《音の絵》《展覧会の絵》■稲田潤子
サンプルのご試聴 クライスラー/ラフマニノフ:愛の喜び
曲目
ラフマニノフ:練習曲集《音の絵》作品33
ヘ短調 (2:12)
ハ長調 (2:28)
。 ハ短調 (4:08)
「 ニ短調 (2:42)
」 変ホ短調 (1:34)
、 変ホ長調 (1:38)
・ ト短調 (3:10)
ヲ 嬰ハ短調 (2:23)
クライスラー/ラフマニノフ:愛の悲しみ (4:03)
クライスラー/ラフマニノフ:愛の喜び (6:13)
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
プロムナード (1:21)
こびと (2:28)
プロムナード (0:51)
古い城 (4:12)
プロムナード (0:25)
チュイルリー (0:58)
ビドロ (3:15)
プロムナード (0:38)
殻を付けたままのひよこのバレー (1:02)
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ (2:15)
プロムナード (1:23)
リモージュ、市場 (1:21)
カタコンブ (1:46)
死者たちとともに死せる言葉で (2:01)
鶏の足の上に立つバーバ・ヤーガの小屋 (3:13)
キエフの大門 (4:59)
録音/2004年10月25・27日 都留市文化センターうぐいすホール
使用ピアノ/カワイ・フルコンサートグランドピアノEX
ピアノ調律/濱口直巳 写真/井村重人
録音技師/林 正夫
録音製作/ゼール音楽事務所03-3995-5221 Fax03-3995-1437
制作/カワイ音楽振興会03-3320-1671
価格/2,500円
取り扱い店
ディスクユニオン、ヤマハ銀座店、カワイ・ミュージックショップ青山
プロフィール
東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コースを最優秀賞、首席で卒業後渡仏。パリ国立高等音楽院ピアノ科、室内楽科ともに一等賞で卒業。パリ・エコール・ノルマル音楽院にて演奏家資格を取得するなど研鑽を積む。
全日本学生音楽コンクール、日本音楽コンクール、ソフィア国際ピアノコンクールなど国内外の数々のコンクールに優勝、入賞する。
1997年にはモスクワで行われたラフマニノフ国際音楽コンクールピアノ部門で第3位(2位なし)を受賞、注目を集める。
現在、日本とフランスを中心としたヨーロッパ各地で演奏活動を行っている。フランス・ルーマラン音楽祭では毎年リサイタルを開催。また日本でもリサイタルの他、NHKテレビ「ショパンを弾く」、NHKラジオ「FMリサイタル」「名曲リサイタル」他に出演。音楽に絡めた即妙なトークにも好感がもたれる。
アリオン音楽財団企画によるコンサートでは「日本人離れした豪快さ」と好評を博すなど、現在最も期待されるピアニストの一人として着実な活動を示してきている。
モスクワ交響楽団、ソフィア放送管弦楽団その他数多くのオーケストラと共演。東京ニューシティ管弦楽団定期演奏会ではソリストをつとめ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏し、非常に高い評価を得る。
2002年4月よりシリーズ“Imagination”をスタートさせ、第1回「ロシアからの碧い風」、第2・3回ラフマニノフ生誕130周年記念「碧い大地からの贈りもの」、第4回「光と風にたわむれて」を開催、好評続行中。
これまでに故三浦浩、三浦捷子、故中島和彦、松浦豊明、ジャン=クロード・ペヌティエ、ジェルメーヌ・ムニエ他の各氏に師事。
誌評
音楽現代
東京音楽大学を卒業後パリで研鑽を積んだ稲田潤子のデビュー盤。まず、最近の日本人演奏家の録音に多い深いエコーが聞いたCDではないのに好感が持てたことを述べておく。ラフマニノフとムソルグスキーのロシアもの(うち2曲はクライスラー原曲ラフマニノフ編曲作品)で構成された全曲を通じ、常に全ての音符を明瞭なタッチで鳴らし曖昧な音を残さないようにしているのにもかかわらず決して耳にうるさくないのは、リズムの揺らぎを抑制し安定していること、主・副声部をはじめ装飾音の価値の序列が明確でそれらを弾き分けるテクニックを備えていることにあるように思う。リズムの揺らぎを控えていると述べたが、クライスラー原曲の2曲のセンスあるテンポ・ルバートはやや主知的な「音の絵」と異なるピイアニズムであり、実演では「日本人離れした豪快さ」と評されたそうなので、彼女の実像はとんでもなくスゴイのかも、と思わせる録音で次作に期待が持てる。
レコード芸術
稲田潤子は、パリ・エコール・ノルマル音楽院に学び、1997年、モスクワのラフマニノフ国際音楽コンクールに高位入賞という経歴を持つピアニスト。これがデビュー・レコーディングであるが、たいへん力量のある、センスの面でもすぐれたピアニストだということは、とくに望んでの録音だというラフマニノフ《音の絵》作品33の第1曲からしてはっきりと感得される。一般にラフマニノフの表現に必須だと考えられる多感なメロディの歌いくちや重厚なハーモニーの表出のみならず、ダイナミックなリズム感の表現にも長(た)けていることが、このピアニストの長所に違いない。したがって8つの《音の絵》はどれも聴き応えに富むが、曲集を締めくくる第8番嬰ハ短調の迫力などはとりわけて印象に残る。そのあと、ラフマニノフ編になるクライスラーの《愛の悲しみ》《愛の喜び》の一対が挿まれたのち、ムソルグスキー《展覧会の絵》がディスク後半を埋める。これもけっして悪い演奏ではないが、名演あまたある作品なので、その中において傑出した魅力を感じさせるには、いま一歩の感を抱かせる。きっちりと弾かれ、前記のようなこの人の長所も随所に出ているのではあるが、聴いていて「これだ」と膝を打たせるような瞬間は訪れて来ない。妙な細工を施した演奏に比べたら遥かによい素直な演奏だとは、確かに言えるのだが。ともあれ、今後とも得意のレパートリーで実力を大いに発揮してほしいピアニストである。
(濱田滋郎)
〔録音評〕 正攻法でスクウェアにピアノ演奏に対した感じの収録。オーソドックスであり、妙な作為を感じさせない安定感がある。心持ち近接的な収録という感じはあるが、ホール空間があまり広くないかデッドなのか。近接的収録でのキンキン、カンカンしたピアノ・サウンドになりがちなところがなく、ナチュラルかつクリアな収録である。
(神崎一雄)
稲田潤子ホームページ