プロフィール
東京藝術大学およびポーランド国立ワルシャワ・ショパン音楽院卒業。
1994年パデレフスキー国際ピアノコンクール第4位、1995年ゲッティンゲン・ショパン国際ピアノコンクール第3位、1996年フンメル国際ピアノコンクール第3位入賞。
1991年のデビュー以来国内外でのオーケストラとの共演(新星日本交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、つくば室内管弦楽団、ワルシャワ室内管弦楽団、ポーランド国立シロンスクフィルハーモニー管弦楽団、スロバキアフィルハーモニー管弦楽団)およびソロリサイタルを精力的に行っている。
古典から近代まで幅広いレパートリーを持ち、日本人ならではの「間合い」を生かした演奏スタイルに定評がある。
第50回ドゥシニキ国際ショパンフェスティバル、ジェラゾヴァ・ヴォラ(ショパンの生家)他ポーランド主要都市でのリサイタルツアー、クウェート室内楽音楽祭、ドイツのゲッティンゲン、ボヘム、バアードラウテルベルグなどで高い評価を得る。
近年日本国内ではオペラシティ(東京)、音楽の友ホール(東京)、電気文化会館(名古屋)等でのソロリサイタルでショパンチクルスを展開中、マズルカやポロネーズ等民俗音楽独特のリズムと「熱い心」を表現できる数少ない演奏家との評価を受ける。
誌評
レコード芸術
歌いくちと言い、響かせかたと言い、これはたいへんきりりとしたショパンである。演奏力十分で、主要なプログラムである4つの《バラード》は、いずれもよくコントロールされた見事な推進力をもって、精力的に奏でられている。すなわち、粗暴さや大仰さにはけっして陥らない節度のうちで、十分にダイナミックかつパッショネート演奏が繰りひろげられる。ディスクのオビにちらっと書いてあるキャッチ・フレーズには思わず笑ってしまうようなものもあるが、当盤の「ショパンの“熱い心”、ここにあり!」に対しては、聴後「なるほど、たしかにそのとおり」と、思わずうなずいていた。
私の知る限りCD界初登場の伊藤めぐみはワルシャワ・ショパン音楽院卒業ののち、1994年のパデレフスキ国際ピアノ・コンクールほか幾つかの国際コンクールに入賞を果たしている。必ずしもショパンのスペシャリストではないというが、近年のリサイタル活動においてショパンを中心的レパートリーとしていることは事実で、当ディスクにも『ショパン・アルバム氈xと銘打たれているところからは、当面この作曲家に打ち込んで行きそうである。ちなみに、ピアニスト自身がブックレット中に記した文章のうちには、東京芸大における遠藤郁子との出会いから多くのことを学んだむねが記されている。今後、注目していたいピアニストである。なお、アンコールのように弾かれている嬰ハ短調の2曲、遺作《ノクターン》と《幻想即興曲》からも、“ショパン弾き”としての資質は匂い出ている。(濱田滋郎)
極めてオーソドックスな音づくり。高、低音のバランス、直接音、間接音の割合、楽器の距離感、音像の大きさ、ホール空間の広がり、音の粒立ち、強奏の安定度などピアノ録音に要求される要素がよく満たされており、トーンはやや硬質だが、演奏スタイルに相性のいいクリアネスをもつ。贅沢を言えばここにしかないチャーム・ポイントか。(相澤昭八朗)